2012年2月9日木曜日

北浜喜一            ・ふぐと日本人



北浜喜一   ・ふぐと日本人 
河豚はコラーゲン一杯 河豚で命をなくす人を救おうと60年河豚を研究 
1954年に魚類研究者に声を掛けて河豚研究会を立ち上げる
河豚の味は秋から春がうまいと云われるが  河豚の肉100g中に コラーゲン蛋白20g 
脂成分0.1g 糖質0.1g 灰分0.2g 後は水分
味を作り出すのは人間がやるんです  何でこんなに河豚料理が大衆化したかと言うと 
ポン酢が有ったからだと思います
コラーゲンと有機酸 酢酸 乳酸 クエン酸 との相性が非常にいい  
ポン酢と河豚のコラボレーション  河豚の皮はコラーゲンの塊 肉にもコラーゲンがある
コラーゲン(抗原質 :くっ付ける基) 複合体  立体構造の繊維状のタンパク質なんです
 だから河豚の身はこりッとしてしまっている

我々人間の60兆ある細胞をくっつけているのが種類は違いますが コラーゲンなんです 
ふぐのコラーゲンは他にはない
最後の雑炊まで食べないとけない 
それにはビタミンが一杯入っているし 肉のコラーゲンが全部流れ込んでいる
河豚料理店を立ち上げたのは昭和29年~ 日本河豚研究会を立ち上げた  
父親が廻船問屋をやっていた 大阪は魚庭と書いた それが 難波 浪速とかになる 
魚の多く取れるところだった
河豚の生態とか 世界の学者との交流もできたのも河豚のお陰
父が河豚を釣って来て、それを食べていてそれが高じて店を出すようになった
 
大正2年 20数通りの料理法を既に持っていた
てっちり、と てっさが最近までの河豚料理 口先から臓器から尾ひれまで全部料理して食べる  ひれ酒 召し上がって貰う
河豚の毒(テトロドトキシン)は末肖中枢神経に影響する 
河豚の後ろ半分はそのかたまりのようなもの  それがじわじわと働く 
河豚を食べるとあったまると云われるが    血管運動神経の活躍を助長する効果がある  
毒の量が多くなると血管運動神経の活動が止まって呼吸の抑制が 起こる  
ふぐ中毒死の原因は何かと言うと 呼吸困難による酸素の欠乏 極端に言わせると薬は要らない 人工呼吸をすれば助かる 

支肢の先端にしびれ感が出る 筋が弛緩する そうするとお腹に入ったその毒がグーッと回って来る 遂には意識不明になる 
意識不明と言うが本人の意識は正常なんです 処が物が言えないと云う事だけなんです 
もう如何と枕元で云うとショック死することが有る
昭和58年12月2日 厚生省局長通達で衛生に関する通達 38種類のうち21種類は食べてもいい しかし内臓は食べてはいけないとなっている
名古屋河豚 「河豚食えば わが身の終わり 名古屋河豚」 日本近海の河豚は内臓を取り出して肉を食べる限り中毒の心配はない
 
江戸時代 幕府は1668年以降 瀬田の渡し船と河豚に死する者は家禄没収 お家断絶という厳しい掟を作った
幕末に大衆が混乱期に河豚の味をしめる  
明治19年~昭和54年までの12600名中毒になっているそのうち 6925名が亡くなっている   昭和22年 470名亡くなっている 先代が何とかしなくてはいけないと思って 社会に尽くせと云われて 東大 阿部宗治  京大 時岡隆  九大 内田啓太郎  
昭和29年に世界的な魚類学者にバックアップしてもらって 河豚を扱いながらいろいろアドバイスをしてもらいながら 今日まで来た

昭和50年1月16日 八代目 人間国宝の坂東三津五郎の事件 料亭で河豚の料理で亡くなってしまった
条件的に発生するのがふぐ中毒の特徴 雄と雌で違う 取れる場所によって違う 臓器のある場所によって違う 
あの時は2kgの臓器を全部で7人で食べている 1.4cm角の胆(肝臓)を全員が食べたが三津五郎のみがあたって亡くなってしまった
其の時に奥さんが数千万円の保険を掛けていた 事件性が高いと大変な事件になった
たまたま三津五郎さんの食べた処が当ってしまった(それまでも超一流の料理人により河豚を食べていたが当らなかった しかし今回当ってしまった)
 
肝につい手を出してしまう 陶酔する様な味はあの世にいってしまう 肝臓ではなく 肝膵臓(肝臓と膵臓が混在している)である
実際舌に乗せるととろーとしている 甘みはアラニンの甘み(脂の甘み) 河豚の味ではない
河豚料理は中国から来たようなもの 延暦23年に弘法大師が難破して福建を経由して鎮江 西安 ・・・河豚ロード(歩いた道) 中国では河豚が珍重されてる
倶の多い汁が出てくるがこないと私は嫌われているのではないかと言われるぐらい中国では珍重されている
揚子江でとれるのは江豚と言われていた
 河豚は何故毒持っているのか テトロドトキシン 河豚は毒を取ってしまうと死んでしまう 
ふぐは自分の身を守るために毒を持っているのだろうと思う
海外では河豚食に熱い眼差しを持っていることはひしひしと感じる
 
坂口安吾 「我々は事も無く河豚料理に酔いしれているが、あれが河豚料理として通用するに至るには 暗黒時代を想定すれば そこには一服の大ドラマが有る
幾十百の指導の殉教者が血に血をついだ作品である その人の名は筑紫の浦の太朗兵衛であるかも知れず 玄界灘の沌兵衛であるかも知れぬ 
とにかくこの怪物を食べてくれようと心を固めたちまち十字架にかけられ天国に急いだ人が有るはずだが 其の時に子孫を均等に集め この怪物を食ってはならぬ
と遺言した太朗兵衛があるかも知れぬが、おい俺は今こうして死ぬけれどもこの肉のうま味だけは 孫々にわすれてはならぬ おれは不幸にして血を絞るのを忘れたようだが 
お前たちは忘れず血を絞って食うが良い ゆめゆめ勇気をくじいてはならぬ  
こう遺言して往生遂げた沌兵衛がいたに違いない  
こうして河豚の胃袋について肝臓について臓物の一つ一つについて各々の訓戒を残し 自らは十字架にかかって果てた 幾百十の沌兵衛がいたのだ」
と書いてある

河豚に関してこれほどの凄い文章は見たことがない
淡水の河豚は観賞用が多い 汽水系は雑食系 いか たこ かに 貝 これらが主食 奥の ノドに咽頭歯があり 粗く砕いた食べ物をここで更に噛み砕く
膨張嚢(のう)を膨らまして海底に吹き付けて砂泥にある舞い上がったゴカイ等を食べる 
「吹く」から名前がふぐになったと云う説もある
神経節がやたらと多い  三枚に下ろす時にちりちりと音がするが、最近の河豚は音がしない 環境が変わってきた事によると思われる

海洋水 地球の温暖化 昭和48年から私は提唱している  天然トラフグは本当に貴重になった(既に絶滅種もある)
養殖の下のヘドロがそのうちどう影響を及ぼすのか心配です 
河豚は酸素の要求量が少ないので密殖する 一つの池に沢山放り込み過ぎる 
血合い肉が少ない 海はますます荒れてくる
多い時で全国で1750万匹ぐらい養殖していた時期が有る  
海が汚くなるのは当然のことなんです 
モイストペレットはやる 生餌はやる モイストペレットはいろんなもの薬品を固めたもの 
抗生物質は沢山使う 決して魚には良くない(人間に対しても良くない)
お薦めの河豚料理 河豚には味がない  味付け 工夫によってはどんなものにでも仕上がる 
河豚は料理人の腕次第 DNAの塩基配列の解析にしても河豚の解析の結果が我々の将来の医学に大きな役割を果たすことは確かです