2012年9月29日土曜日

坂東元(旭山動物園園長)     ・命と向き合う



坂東元(旭山動物園園長)  命と向き合う
酪農学園大学  獣医学部を卒業 昭和61年旭山動物園に勤務 平成21年に9代目園長になる ペンギン オラウータン アザラシ館等の施設を手掛けてきました  
動物本来の能力 ありのままの姿を引き出す工夫を引き出した行動展示と言われる方法で  
今ある旭山動物園を形造った方です   
父が転勤族で 本州を転々とした  いじめられっ子だった  虫等を飼って過ごしていた  
平成16年アザラシ館ができて、有名に成り、全国区になった 
 動物園は観光施設ではないと考えている  経済的な評価だけが先行するようになった
受け入れる能力を越えた人達が来場した  
今は200万人ぐらいで等身大の規模になったと思っている
獣医として入った  死の迎え方が違っていた  
象の朝子  と係わっていた時  歳を取っていた  
堅いものを食べられない状況    足の裏に小さな怪我をしていた 

凄い社会性が強く、コミュニケーションを細かに取る動物であるが、 それがたった一頭で何十年も生きてきた 
ちゃんと象として生きている  
人間一人ぼっちに成って生きていたら、人としていられるのかなあと思った 
象は体重が4~5トンになる  
治療するのに麻酔を掛ける方法があるが体重が重いために同じ体制でいると問題がある
麻酔はかけられなくて、痛みを伴わない治療をしていたが、段々悪くなってきた  
象の足は周囲1mある  足音はしない(衝撃を吸収する様な構造になっている)
化膿してくる (クッションが潰れてくる)  眼が合うが、元気の時の様な眼をしている  
痛みを感じないわけが無いのに如何してこうなのかと思った

もっと悪くない脚は付けずに、肘を突くようになった  24時間寝ない象で 金が無かったので要らなくなったマットを学校から貰ってきて 少しでも柔らかい様にしてやった  
半年後 いよいよ倒れていて 1週間で死を迎えた  
倒れて初めて検査ができたが、右前脚は肩まで骨が腐っていた  
死ぬまで眼が変わらなかった  恨まない眼  何でこんな目で最後を迎えられるのか  
動物たちは食物連鎖の中で、食べる食べられる、殺す殺される中で、全部が命の輝く仕組みの中で生きている  
人間のように自分だけがと言う生き方ではない

一部に痛みが降りかかる苦しみが降りかかった時に、それをどうにかしてでは無くて、受け入れて生きると言う生き方をする 
だから誰かを怨むと言う事をしないし、どうして自分だけがこうなるかという眼をしない  
自分に降りかかった物を受け入れた中で生きて、生きれ無かったら、そのまま死んでゆくだけですよという生き方をする   凄い どの生き物も  僕らって何なんだろうと思うくらい   
当時の動物園はつまらないと言われていた 
可愛い可愛くない 珍しい珍しくない と言うような我々人間の薄っぺらい基準で動物が見捨てられていた

そして内の動物園は無くなろうとしていた  
経済的に立ちいかなくなって止めるのではなく、こんな動物園はつまらないという事から止めちまえと言う事なんですよ
ラッコブームでラッコが入ってきた(北海道の水族館) 当園にはラッコがいなかった  
動物園は楽しければ良いと言うような傾向がある  アザラシが3番目に見る 
子供達はずっと見続けていた 次に行こうと先生が言ったが子供達はまだ見たいと言う
これラッコじゃないよ ただのアザラシだよと言う 
子供達は「なあんだ ただのアザラシなの」という事になってしまう
大人の価値観が子供に移ってゆく瞬間なのだと思う 子供の価値観を育てることが必要だと思う

黙っていたんでは動物園が無くなってしまうので、ワンポイントガイド お客に動物の説明する  
これは画期的なことだった
ひと前でと言うのはあり得ない事だった   予行演習でもぶるぶる震えて緊張した
暗記したことをどこまでしゃべれるか、だけで、面白くなく段々と人がいなくなってゆく   
判ってくれない人に如何した伝えたらいいのか 考えて  段々結果が出てきた
動物本来の能力や習性を見せる「行動展示」を考案、同園躍進のきっかけをつくった
動物園、水族館の概念を変えた   
命は誕生があり、死がある   
動物園は楽しいところで誕生は伝えられていたが、小さな動物の死は伝えられなかった
タブーだった  
ライオンだったら30年ぐらい生きられると思っているが、そんなに長く生きてはいない

ペンギンは群れているので一匹死んでしまっても解らない  
個体選別ができるようにして、死を知らせるようにした  淡々と死を伝える
これが大きな議論を呼んだ  ペンギンの散歩が一つの風物詩となっていた  
命を閉じ込めているのは我々のエゴで 死を当たり前に伝えないといけないと思う
動物の死は難しい  
動物園で過ごす動物はペットとは違って、何万年もかけて人が飼いやすいようにした動物ではないので、狭い檻に居ても本能は持ち続ける
飼育係との関係は成り立つが、これ以上は絶対に駄目ですよという線は絶対に崩さない

治療されているとは思わない  エゾリスは寿命3~4年といわれているが 最長動物園で16年生きた経験がある  老衰
動物園 はある意味おわれない命  どこかで譲られない命に成ってしまっている  
そして死は必ず来る
動物らしく暮らさせたい 動物らしく終わらせてあげないと飼育は完結しない   
最後は安楽死を選択に入れながら、治療をして最後を迎えさせたい  
ちゃんと死を受け止めてあげないといけないんじゃないかと思う
死んでから心の中に生きてくる  動物は常に死とむき合って生きている