2012年10月8日月曜日

渡辺隆次(画家73歳)      ・生命曼荼羅を描く 2

渡辺隆次(画家73歳)           生命曼荼羅を描く 2  
今年は暑くて、蚊が少なく、蝉の声も聞かなかった  草花も枯れたものがある  
35年自然の変化を見てきた  里山が無くなってしまった  道路も一杯出来た  
裾野の自然は激変した  人間の心も変化した
高校生も歩いていたが、挨拶はした  
今は挨拶するのは殆ど無い 直接的な交流は無くなった 
バイク、自動車 マナーが悪くなった
運転している人の心が変わった(大都会と変わらなくなった)   
古老(明治の人)の方たちとの交流が有ったが、今はもうない

車が頻繁に通る所は、かつて道路を隔てていてもコミュニケーションが有ったが、今はそれを遮っている (道路を介してコミュニケーションが分断されている)
バブルのお陰でいろいろな美術館ができたが、今は閉めてしまったところもある 
入場者も少ない  美術館運営が下り坂になってきている
「生命曼荼羅」を展示  
小さな生き物から大きな生き物まで観察してきた実感  清水多嘉示、彫刻家が設立した美術館で開催した
きのこを題材にしたものが結構多い  
環境が変わったことで、秋になったからと言って、あの山この山キノコが待っているぞということは無くなった

里山は無くなり、残った森林もキノコ狩りに入ろうと言う気が無くなるぐらい、荒廃している   
モチーフにするキノコは全て敷地内のキノコです
かなりの数のキノコができる  胞子紋(きのこの裏側の胞子)も描く  
或る時一晩テーブルに置いておいたら胞子が空気に多少あおられて胞子の造形ができた
それが面白くてきっかけとなる  胞子は科によって色も違う  
それを画面(胞子が描く)の中に取り入れた作品を出品しました
定着するために定着液で何度も何度も定着させる    
大気の中に胞子がある
(東京タワーのてっぺんに物質をキャッチする装置がありそこで胞子も捉えられた)

命が回っている  
おしっこ(アンモニア)した場所にキノコ(いばりしめじ)ができる
(アンモニアを分解して新しい命が出てくる)
昔の有る新聞に京都大学の相良直彦先生が アンモニアを分解するキノコが有ると(実験で証明する) であるなら人間の死体もキノコの栄誉分に成りうる
「あしながぬめり」がある  
モグラは地中で生活するけれども、便所は違う場所にて行う 
相良先生はそこから出てくる「あしながぬめり」をせっちんたけと言っている
私は「あしながぬめり」を食べていた  
先生に連絡したところ、取っておいてくれと言われた 
先生が来て実際に掘った所「しみずもぐらの巣」が出てきた

先生は日本のみならず世界のアンモニア菌を研究した  
葉とか木の枝が落ちて、翌年に行くと掃除したように綺麗に成っているが、これは菌によるものなんですね
清水大展先生 冬虫夏草の世界的権威  
生きている昆虫類に菌が取り付く  
蟻が木に行列をなして進んでいて、ある瞬間にぱたっと死んでしまう
之は蟻の中に菌が入っていて、死んでしまうとその蟻はキノコになってしまう  
芋虫、カメムシ等姿そのままで殺される 
不思議な形で生えてくる(とうちゅうかそう)
焚き火後に  「やけあとつぶたけ」が翌年に出てくる 
  
畑シメジ :ホンシメジと混同して食べられていた 
そっくりだけど違う(人間の手の加わった処に出てくる)
畑シメジは地中に埋めた木が腐って数年するとそこから出てくる    
「きつねたけ」もアンモニア系のきのこ、「つくりたけ」 (マッシュルーム)は 馬糞が一番よく出てくる我々は知らぬ間に循環の中に身を置いて命を繋いできた  キノコによって教えられた  
今 胞子紋を使って屏風をつくろうと思っています(来年) 
 
大倉宏(美術評論家)が館長   
妙高寺 日蓮が佐渡に流されるときに荒波の中で漂流して 、角田浜に一時泊る 
それがもとに成って建てられた寺院です  来年700年になる  
その行事の一つとして、大倉さんが企画した展覧会を秋にやります   
私の胞子絵を主体にした屏風等を展示したいと思っています  
命の循環 胞子紋をそんな風に感じてもらえればいいなと思っています
毒キノコは図鑑の中では少なかった 数種類      
最近は毒キノコだけの図鑑が出るようになった

率直に言って、35年間も良く居たなと思います   
命の循環の一役を担ってみたい
(私が亡くなって栄養分を動物や植物が享受して、翌年には私は跡かたもなく、そこには花が咲いていると言うような)    
一頭の倒れた鹿の写真をずっと撮り続けた人 宮崎さん  長野県の駒ケ根の人 
写真集をいくつか出している  この観察眼の凄さに圧倒された 
自分の開発したカメラで撮り続けた  現代の九相図だと思います  
鎌倉時代 人間のはかなさを絵巻物で示したもの  
まさにこの写真集はこの系列だと思います