2012年10月20日土曜日

杉本和樹(奈良文化財研究所長)  ・宝物を守る(正倉院展)

杉本和樹(奈良文化財研究所長55歳)        宝物を守る(正倉院展)  
奈良時代756年 光明皇后が亡き夫、聖武天皇が愛された品ゆかりの品を東大寺の大仏に奉納したのが正倉院宝物の始まりです 
以来、1250年余りの長きにわたって大切に守られてきました  
今宝物を管理しているのが、宮内庁正倉院事務所 です
正倉院に伝わる文書の第一人者  昭和58年 に採用され30年の間に正倉院の研究をして、4年前から所長を務めています
全体ではおよそ9000点と言われる 宝物を守る仕事と宝物を守る意味をお聞きしました

東京大学文学部国史学科を勉強する  古代史を専攻する  
それが活かせる仕事に就ければいいなと思った
正倉院事務所に入ったのは、恩師、先生たちの応援が有ったから  
文書を研究する  紛れもない「物」  「資料」   奈良時代の人が実際に書いたもの   
文字を書くということでしごとをすると云う実感を感じた     
東大寺 一大国家プロジェクト  写経  魂を入れるために非常に重要であった  
現在の様な信仰の為に写経とはちょっと違う、大量な文書が作られた  
貴重ではあるが、当時としてはある部局の中で産みだされたものですから、一生懸命文書を作った人にはこんなに貴重になるとは思っていなかったかもしれない
中には聖武天皇、光明皇后が書いたものがある  奈良時代を作った人、自筆のものがある

正倉院の中はどうなっているか?  
屋根の下が三つのブロックに分かれている  
右から 北倉、中倉、南倉  1階、2階(2階は天井が高い)   
宝物 聖武天皇が生前愛用された品品を東大寺の大仏に収められる   
大仏の前は恒久的には無いのでそのうちに北倉に納められた
南倉 東大寺の大仏開眼会が行われた、(聖武天皇が亡くなる4年前) 
其の時にも大量の法具、仏具が有ったはずなので、そういうものが収められるスペースとして
用いられた   
その後ごちゃごちゃになったいきさつがある  
明治時代に所属を一点一点に渡って振り分けられた

現在は空調付きの部屋に管理されている  対応する6つの部屋を作ってある  
北倉、中倉、南倉に相当する形に納められている
事務所全体で20人  保存課ノメンバーは直接宝物に触れる人達で14名  
守るためには定期的にそのものを見る 
部屋が開くのは1年に一回  箱の蓋を開け、包みを開き顔色を見る(之が基本)
複数のメンバーで見る(3~4名)   
初めて見る人も居る そういうメンバー構成にする
気になる事が有るとそこを中心に詳しく見る  それを記載する   
点検と言う仕事の中身
宝物の個性(大きさ 材質 種類)に応じた問いかけをしてあげないとちゃんと応えてくれない
異常があったらそれに対する処置をしなくてはいけない 
本格的な修理をしなくてはいけないものもある 

染色品の修理は大正時代からのノウハウを蓄積してきたので中の職員だけで対応ができる 難易度の高いものは、専門家の知恵と腕を借りて、修理を依頼する例もある  10月に行う   
点検は 御開封の儀を終えて2か月間のうちに全部目を通す  曝流とかつては言っていた 
風を通すと同時に目を通す   早目、早目に目を通す  
こんなラッキーな仕事で良いんだろうと思う事もあるが  先ずは見る 触ることは余りない  
宝物の入れ物を工夫してお盆に載せてあり引き出しを開けたら見えるようになっており、必要なこと以外は触らない
指先は鋭敏なセンサーを持っているので、持ち方(先輩の指導で)含めて 行う
お盆を取りだして敷いたマットの上に置く(床であると落ちる事が無い)  
腹ばいになって見たりする  (安全重視)
電源  部屋の中にあるコードを外に運び出して外のコンセントに接続する  
漏電の可能性をゼロにする

服装は白衣、スリッパではなく、体育館シューズ見たいなものを履く 足元はしっかり固める
正倉院に出す品物は原案を作って提示して、奈良国立博物館に了解して貰う
宝物の価値  これだけ古いものが残っているのは希少な価値 人間が大事に保管していた価値(蔵は狙われやすい) 
幅の広さ(天皇愛用の品、当時の庶民の残したものが入っている  宝物の幅の広さ)  
当時紙は貴重だったので、表裏を使ったりしていた  
当時 中国は唐国  それが国際的に豊かな文化が入ってきた(シルクロードの東端)
光明皇后が東大寺とともにズーッと伝えてゆくようにという光明皇后の意志により、ズーッと伝わってきた 
多くの人の意志により伝わってきた  
守らなければいけないという意志   物理的な気候、環境も勿論ある  
次の世代に旨くリレーして行ったら意味の有る事かなあと思う  
経年劣化を出来るだけ無いようにして、宝物の価値を伝えたい  
その一日 一日の積み重ねですね
正倉院は100年ぶりの大修理になっている  再来年の秋には終了する