2013年6月4日火曜日

藤崎憲治(京都大学名誉教授)   ・昆虫社会から学べ人間社会の未来

藤崎憲治(日本昆虫科学連合代表・京都大学名誉教授)
私たちの住んでいる地球は虫の惑星とも呼ばれます
さまざまな昆虫の生態を知ることで、その昆虫が持つ優れた機能を我々の生活に役立てようと、バイオミミクリーという学問が最近注目されてきています
藤崎さんは、あの臭いにおいを出すカメムシを研究の通して人間社会の在り方を見つめてきた研究者のお一人です

我々の時代は(昭和22年生れ)身の回りの自然しかなかった
自然の中に何が多いかと言うと、昆虫です 昆虫友達になるという人生から出発している
大なり、小なり、みんな昆虫少年だった   中学ごろから脱皮してゆくが(いろいろな方向に)
人間は生物が好き  蝉取りが夢中だった(とりもちで) 蝶は物凄く取りたいという気持ちになる
ヘルマン・ヘッセ エッセーの中で書いているが、 黄アゲハを取る時の心理的な高揚を長い文章でつづっている、これがある日本人の特殊な子供たちの真理ではなくて、人類の子供たちの持っている普遍的な物、あるいは大人の持っているものだと思う

モチベーションがないと、なかなか続か無い 北杜夫  東京の青山は当時原っぱが沢山あったそうなんですね 昆虫と戯れたそうですね 
なにか原点がある  原っぱがある   ここ岡山は里山がまだ残っている
今はリタイアして、自然観里 珍しい姿を写真に撮る 持ち帰ったデジカメで撮ったものを楽しむ
生態学 今西 錦司先生  棲み分け理論  エコロジーって面白いと思った
巌?先生 ホオズキカメムシを研究  集団でいることが多い 集団でいることの意味を解明したいと思った

先生からカメムシをやったらどうかと言われたが、カメムシは最初いやいやだった
ホオズキカメムシは面白かった 円陣隊形を組んで集まる(なんだろう?)
捕食者 彼らに攻撃されると、攻撃された個体は臭気を出す 
ほかの個体が感知して、蜘蛛の子を散らすように、逃げてゆく
臭気は警報フェロモンなんです  天敵を嫌がらせる、臭いにおい そういう機能を持っているだけでなく、警報フェロモンを持っていることが分かった
散った虫たちは、集まりもする(なんで集まるのか?)

臭気が濃度によって、集まったり、警報を知らせたりするのではないかと思った
化学者が濃度が高い時 突発的に出されると警報フェロモンとして機能する 濃度が遅くてゆっくり出すと良いにおいになってみんなを集める と言う事が判ってきた
臭いが情報手段 同じ物質を使い方によって、全く違う機能を持たせる
カメムシのにおいを一番嫌うのは?   鳥が一番カメムシをとらえるが、鳥は賢いので学習をして、結局は食べてしまうが、あまり効果は無いと思うが、目などを狙って放つと、一瞬ブラインドになってはっとたじろぐ、そのすきに逃げる という効果はある

一番嫌っているのは、蟻なんです 蟻は徹底的に嫌う 
科学的構造が一緒なんです  蟻の警報フェロモンは、逆にいえば科学的に、化学的に擬態をしている  同じような物質を生産して、蟻に食べられない様にしている
蟻と言うのは、自然界の中で最大の捕食者なんです  
圧倒的な数、社会性を持っている、優れた昆虫なんです
カメムシは臭いにおいを蟻のフェロモンに似た物質を放出することで、自然界で上手い事成功している

科学にはいろいろあると思っている 
①社会のための科学 応用的にいろんなものに役立つ
②科学のための科学 知りたいと思う気持ち それを提供する それも科学の役割だと思う
ミツバチ 蜜を取る昆虫と思われているが、もっと大きな役割は花粉媒介 なんです
これがなければ果実は生産できない 
実らない ミツバチとかの存在がなければ、食糧生産の凄い減産になる 
自然の生態系がくずれてしまう 
ミツバチが1年間でそのような仕事をお金に換算したら、3500億円と言われています

研究して、人間の生活に役立てている  生物が持っているデザイン、機能、生活様式を真似て、 ミミクリー (模倣) 真似て、新しいテクノロジーを作る
自然を真似ることによって環境に優しい、より持続的な新しいテクノロジーができるのではないかと言う信念を持っている
工学者が昆虫学者、生物学者と手を組んで、そういう学問をどんどん進展させていこうという機運が、盛り上がってきている

撥水性 水をはじく性質  甲虫の羽根、蝶の羽 を真似た物質を作る 塗装とかに使おうとする
玉虫 綺麗な虫  科学的に構造を解析して、塗料に応用する 太陽に当たると脱色してきてしまうが、構造色なので、いくら太陽に当たっても脱色しない 
繊維、車の塗料などに応用されている(市販されている)
アフリカのある都市で使用されているが、アフリカに生息するオオキノコシロアリという大きなアリ塚を作るシロアリの巣の構造、 構造解析をすると、素晴らしい構造になっていて、地中から吹き抜けの様になっていて、無数の穴があって、風が循環している、外気温が40度、50度になっていても30度を維持している

地中からシロアリが水を持ってきて、充散してと言う事もありますし、吹き抜け構造になっているので、空気が流れる素晴らしい構造になっている
これを真似て、新しい人間のための夏でも涼しい、エアコンがいらない、建物ができるのでは
ジンバブエと言うところでは、ショッピングセンターで真似て作っている
モスアイ  無反射構造になっている  モバイル画面、TVは反射して見にくいが、そういったものを使うと凄く見やすい
目指すところは省エネの持続性のある技術 石油に依存しないで、そういうものを作っていかないと人類は先が危ないねと言う事になる

昆虫が小さいメリット 使っている資源が少なくて済む   小さいからこそ飛べる
昔、羽根の長さが1mぐらいあるトンボ  絶滅した
小さいものは世代の交代が早い  環境変化に素早く対応できる
昆虫はそれに対応してきた   足をいろんな羽根にしてみたり、触角にしてみたり、形態を変えて、別の機能を持てるように作りかえる天才なんです
進化は偶然と必然とのミックスの産物 
頭部  触角(臭い感じる感覚、触る感覚、目、脳、 感覚の中枢が頭部
脳は頭部、胸部、腹部、(各節にある)  分散脳 頭が無くても飛べる
胸部に足があり、羽根があるから危険な時は動作が速くできる

抽象観念は人間が一番得意とするところ
ミツバチでの研究 同じ色 赤を連続して与えたら報酬を上げる 赤と黄色(色を違えたら)を与えたら報酬を与えない  連続した色の場合のトレーニングをする
色だけでなく、形とか連続した同じものを与えられたら報酬を与える まるを連続して与えたら報酬をもらえると思うんです  ○と△だと駄目  
連続しているという抽象的な事に対して識別している  
ミツバチは脳の重さが体重との比で比べると、人間と変わらない

人間て、人間じゃないですか、人間中心に考えてしまう
視覚、嗅覚  人間より鋭敏  自分が見ている、接している環境は全て生物にとって普遍的
人間中心主義を出してみて、違う論理でもう一回見直してみる  
人間中心主義から如何に脱却できるか それがこれから重要なポイント
そうなれば他の生物だって賢く生きているのだなと、尊敬、畏啓の念が出てくる
人類のために私たちはしているという観念、目的意識 そうじゃなくて 一番の文明の目標は如何に絶滅する種類を少なくできるか、そういうことを最大の目標にすれば、自分たち、人類に還元される  
自分たちの存続のためにとは思わない事 地球上のすべての生物の存続に意識をスイッチングする
人間がいないほうが、自然生態系は存続する 逆に自然生態系がなければ、存続できない
これが自明の理
他の生物たちと共存するしかない  人類によって沢山の種類を絶滅されている
10~20%は人類によって絶滅されていると思われる
温暖化、熱帯雨林の伐採  何とかしないと人類も危ない
生物多様性をどの程度理解しているのか  分類学は古いものだと思われてしまっているが生物学の本当の基礎なんです(危機に直面している)
しっかり、整えていかないといけない
生物側の方から思考することが求められる