2013年10月22日火曜日

大町志津子(オペラ衣装デザイナー)  ・オペラの衣装に魅せられて

大町志津子(オペラ衣装デザイナー)  オペラの衣装に魅せられて
ヨーロッパ在住の唯一の日本人オペラ衣装デザイナーとし永年イタリアを中心に活躍している大町志津子さんに伺います
大町さんは1954年生まれ 岡山県美作市出身 神戸の短大を出てメーカーに就職しますが、自分の好きな道を求めて、25歳で単身ロンドンに渡りました
イタリア国立ベネチア、アカデミーに入学、美術の勉強を始めます
卒業後はファッションデザイナーとして働き、衣装の魅力に目覚め、舞台衣装や映画製作の中心地、ローマを拠点にし、ビスコンティ監督の映画や舞台衣装の仕事にかかわるようになります
オペラの舞台衣装こそ自分が求めていたものと確信します
ローマのオペラ劇場でのアイーダ、ベネチアのフェニーチェ劇場の椿姫を始め、数々の劇場でオペラ衣装を手がけてきました
異文化の中で様々な葛藤や、病気をも乗り越えて自分の道を歩み続ける大町さんに伺います

イタリアで30年近く舞台衣装を担当  今は母の看病をしながら行ったり来たりの生活
美作で18歳まで、そのあと神戸に行き、どうも私の人生ではないのかなあと、思いロンドンに行った
絵の勉強をするために先ず語学学校に行った
サッチャー首相になったときに、外国人に対して大幅に税金が上がりイタリアに来た
授業料が年間3万円とかだった(日本では当時30万円以上だった)
先生の教室を選んで勉強するが、最初基礎的な事、アートは教えるものではないというような考え方で持っているものを引き出すのが教育だと言われた
私が筆で描く、墨絵の濃淡について先生が感動して、ぴったり寄り添うようになったが、来てもらいたくないようにしていた(先生の後ろに在る世界と戦っていた)
最後に自分のものができるようになった(私に勝ったんだねと先生から言われた)

その後絵をやめて、衣装の世界に入るが、先生から絵を描き続けなさいといわれる
友人がブティックをやっていて、進めてくれてファッションの世界に入った
仕事をしながら、ミラノに通うようになる(3日間)
ある日突然癌だと判り、癌の手術をする 日本に一時帰国 (34歳の時)
やっとスタートラインに立ったと思ったときにそのようになってしまった
父がお前は今帰る時期ではないと、イタリアに追い返された
ミラノの学校 休学中だったが、元気になったので再入学ができた
癌の細胞検査に20日間かかったが、その時は5年ぐらいに感じた
その時に、生きている私にしかできないことがあるのではないかと、先ずは其れを探そうと思った(まだ衣装の世界などは考えてはいなかった時代)

卒業制作に夜会服を作った  古い帯を使って夜会ドレスを作って、銀賞を頂いた
副賞として、ファッションデザイナーの方の家に3か月ステー出来る物だった
ファッションは消耗品なので、もっと違う分野があるのではないかと言われたりしていた
衣装を作っているアトリエを見に行ったら、オペラの立派な衣装だった
その時はじめて、衣裳って、こんなに凄いものなの、生地の種類、色、形、歴史があり、文化がありヨーロッパの凝集されたものが衣装にあった   これだと思った
長い自分探しの旅だった
より高い経験を積むにはどうしたらいいか、全く判らなかった
知りたいことを10項目を書いて知り合いの人にいったら、全部答えてくれた

先ず作品を観てどんなものが作られているか見なさいと、自分が良いと思う先生につきなさい
ビスコンティのアトリエは世界でNO1と言われるところで、他のアトリエとは全然違う
話したが、今は駄目なので後3カ月先に電話をしてきなさいと言われた
其れは社交辞令だったようだったが、2年間して粘り勝ちした
アクセサリーを作る人が病気になり、代役をすることになる
チネチッタの作業場に行く事になる(夢に思っていたところだった)
映画にもかかわる 新国立オペラ劇場のコケラ落としをすることになり、一緒に行きたいと嘆願して、叶う事になった

ヨーロッパの文化はアルプスの山のようにそびえている
蟻がどうして山を登るのと言うような感覚で、夜も寝ずにやっていたりした
判ったのは、やっぱり最終的に舞台に上がったものを見るときですよね
きちっとした時代考証、とか総合的なもの、イタリアが持つ文化は深くて長いものがある
総合芸術を体験できたので、これから10年は歩いていけると思った
厳しい競争社会なので、戦っていかなければいけないことがある
ヨーロッパにはヨーロッパの歴史があって其れが衣装に出てくる
椿姫をやった時に、私らしい衣装を作りたいと思った
私の文化とは何かを探した  
研ぎ澄まされて無駄のない物を見つめる、極める衣装を作りたいと思った
やっとこれで先生に出来ましたというようなものができました

経験を日本の若い人たちに、チャンスがあると言う事 衣装と言うものの深さをもっと知ってもらいたいと思う