2013年12月31日火曜日

池田清和(国際そば学会日本代表) ・私のそば人生

池田清和(国際そば学会日本代表)  私のそば人生
昭和22年生まれ 神戸学院大学栄養学部教授 専門は伝統食品の栄養学ですが、特にそばの研究に打ち込み、その栄養やおいしさを分析してきました。
そばが健康、長寿にかかわる様々な成分を豊富に含んだ優れた食品であることを解明し、国内ばかりでなく、海外でも食生活への積極的な利用を説き続けています。
そばは身近な食品で有りながらどんな栄養が含まれているのか、食品としての特性はあまり知られていません。
そば研究を生涯のテーマとしている池田さんにそばをめぐる風習を始め、そばにはどんな栄養が含まれ、どんな働きが期待できるのか、そば研究で見えてきた伝統食品そばの魅力と可能性などについて伺いました。

日本の和食が世界の無形文化遺産に認定された。
世界の人たちに和食を知っていただける事、日本は世界一の長寿国になっている。
特に女性は30年間近く世界一の長寿になっていて、長寿を支えているのが和食なんですね。
そばも素晴らしい和食の一つです。
そばは鎌倉時代 麺としては食べていなかった。
年越しそば、福岡県のあるお寺の坊さんが貧しい人にそばをふるまったら、翌年に振る舞われたひとたちから運が向いてきたといわれて、運そば説が言われているが、そのほかにもいろいろ説がある。
そばと言う言葉は「かど」と言う意味がある。 
そば麦と言う言葉で呼ばれ そばの実は三つの角があることから、みかど と呼ばれ、帝=天皇に通じる。 
天下安泰 家族安泰、そばは長いという意味があるので、長寿に通じる。
そばは切れるというが、嫌なことを切ってくれるという事もあり、年越しに食べられるという事もある。
そばは風が来て倒れてもすぐ立ち上がるという事から、縁起がいいといわれる。

そばの効能説 12月31日に食べて、食物繊維があって、いろいろなものを排泄してくれる効果があり、身を清めて新しい新年を迎えようと、言う様な事とも言われている。
日本古来の和食の一つ
ロシアの南の方が原産地と言われていたが、京都大学の先生が中国を回って遺伝子などを調べた結果、中国の南部が原産地であることが判明した。
朝鮮半島を通して日本に入ってきたといわれる。(後はシルクロードを通って中東、ヨーロッパへ)
麺で食べる食べ方は、日本、韓国、中国などで食べられるが、そういった食べ方は少ない。
そば米と言われるが、徳島県はひ弱な土地で米がとれにくいが、米代わりに利用した。
日本ではほかに山形県で利用されていて、むきそばと言われている。
ヨーロッパの方ではカーシャー(ロシア語)料理が多い。

1570年ぐらいに麺と言う言葉が登場する。 
長野、山梨県 あたりに出来て、江戸に入ってそばきりと言う食べ方が非常に広まったと考えられている。
砂場 もともとは大阪の店(江戸に家康が居を構えた時に来たと言われる)  
井原西鶴にもそばの話は出てくる。
鈴木梅太郎先生、満田久輝先生が食品関係で文化勲章をいただいているが、満田先生はわたしの恩師です。
満田先生の米の研究に興味を持った。 それからそばの研究を始めた。
国際そば学会が30年前ぐらいに出来た、以前宮崎で学会が行われ、そこで発表したり知り合いが出来て広がって行った。

さらしなそば:白いそば  いなかそば:黒いそば →ぬかみたいな部分が含まれているもので、ビタミン、ミネラル、ポリフェノール等いろんな成分が入っている。
麺、粉と水だけで作る文化、技術がすばらしい。
たんぱく質に興味があって、そばのたんぱく質を調べると、9つの必須アミノ酸があるが、
小麦はリジンのアミノ酸が少なく栄養価が40 米は68 そばは100 動物性たんぱく質に匹敵するような栄養価がある。
消化は小麦、米、そばの順に良い。 そばは一番悪いがそこに興味を持った。
消化が悪いと、人間の身体には悪いのは良くないと言われていたが、最近肥満の問題があり、それがコレステロールを下げる効果を持っていることが解ってきた。
栄養学から、いい面、悪い面が段々見えてきた。
そばにはほかに消化しにくいでんぷん(レジスタントスターチ)があり、食物繊維の様な働きをする。
江戸時代の本に、そばは人の腸胃の不快をこなすと書かれており、水に溶けないない食物繊維があるために便通を良くしたり、大腸がんの予防にもつながる。

そばゆ(飲むと健康 ビタミン、ポリフェノール等が溶け込んでいる)
うどんのゆ(飲んでも健康には関係ない)
ルチン ポリフェノールの一つの成分 普段食べているなかではそば以外にはほとんどない。
血管のもろさの改善作用、高血圧の予防効果がある。
カリウムも沢山含まれている。
カリウムはナトリウム(高血圧の原因物質の一つ)を排泄する効果がある。
小麦製品うどん、パンなどは塩を入れないとグルテンという成分が固まらないが。そばにはグルテンがないので、そばは塩を入れないので、減塩食物。
ビタミンCはほとんど入っていない。 ビタミン12も入っていない
ヘスペリジン (柑橘類に入っているがルチンと似た作用がある) 血管拡張する効果があり、ゆず湯はその効果がある。
いろんなものを食べるのが長寿の秘訣。

栄養、美味しいは表裏一体 疲れると甘いものが欲しくなる。
美味しさを分子レベルで調べようと、分子調理学を初めていいだした。
21世紀の調理学の本に投稿、美味しさを分子レベルから明らかにしようと、タンパク質、でんぷん、ルチン等がおそばの美味しさにかかわっていることが分かった。
そばには打ち立て、引きたて、ゆでたて、取り立てなどがあるが、調理したてがおいしいといわれるが、長く貯蔵すると食味が悪くなる。
温度、湿度、期間が影響している事が解った
石臼の合理性  粒度分布は普通のロールと違って、かなり細かい粒と粗い粒子が混在する。
粗い粒子がそばの香りを持ってきて、細かい粒子が粉をくっつける効果を持っている。
湿度、温度を低くして貯蔵する事が必要。
そば粉は風邪をひくと言われるが、ぼそぼそになってくる。

伝統食品の大切さ 米を中心に味噌汁、そばなど3000年の歴史がある。
脂肪エネルギー 30%以下にしてほしい。 
今は30%を超える人は3~4人に1人になってきている。
アメリカは40~50%になってきており、肥満になりやすい状況。
引き継いでゆくのは学校給食しかないといわれる。
そばなども学校給食の中に入れてゆく事によって、広がってくれればと思っている。
昭和21年の平均寿命は55歳、今は男性79歳、女性86歳  伝統食品と欧米風の食事が合わさってきたのでいい状況だが、今後30年、40年先は大丈夫だろうかと思う。
日本では麺に拘っているが、それ以外の食べ方を学校給食に取り入れたらいいのではないかと思う。
広くそばを利用して行けばいいと思っている。

20世紀はパンの時代、21世紀は麺の時代だといわれる。
うどんヌードル、ラーメンヌードル (日本の麺) アメリカでも興味を持ってきている。
もう少し、そばの新しい加工方法をやっていきたいと思っている。
17種の野生そばがあるが、食べるのは普通そばとだったんそばがある。
だったんそばはルチンが普通そばの100倍入っている。
糖尿病、脂質異常症などに改善効果があるが、硬くて食べにくいので、食べやすい方法を考えている。