2014年1月13日月曜日

山口育子(こむる理事長)     ・賢い患者を目指して

山口育子(こむる理事長)   賢い患者を目指して
1965年 大阪生まれ  24歳の時に突然卵巣がんが見つかり、手術を受けます。
しかし、癌告知が一般的ではなかった時代で抗癌剤で辛い症状が出て始めて、自分の病気を知りました。
患者と医療者がもっと、コミュニケーションを取って、治療について話し合う必要があるのではないかと思っていた矢先、大阪で患者と医療との橋渡しを行う市民グループ、こむるに出会いスタッフに加わることにしました。
このこむるでは賢い患者になりましょうとの合言葉に、患者と医療者が対話と交流の中からお互いに気付きあい、歩み寄る関係作りを目指して、電話相談を中心に活動を続けています。
こむる(COML) 医療と法の消費者組織という英語の頭文字を取った造語。

賢い患者とは? 
①病気はだれにも変わってもらえない持ち物 最終的には自分の持ち物なのだと自覚する。
②病気の説明を受けたら、理解する努力をして、自分がどんな医療をお受けたいのか、しっかり 考えよう。
③こういう理由で、私はこの治療法を選びますと、伝える。
④コミュニケーションをとりながら、自分で出来る役割をしっかり理解して、医療者と共同しながら治療  を受けていきましょう。
⑤一人で悩まない。 誰か(かかりつけ医、電話相談等)に話すことによって悩みを整理する。

1992年2月にスタッフに入る。
1990年9月に卵巣がんになって手術を受ける。 抗がん剤の治療は無かった時代。
入院が300日以上だった。  癌は隠す時代だった。 生きていける確率は2割と言われていた。
本当の事を知るには凄く努力しなくてはいけない。
医療者とのコミュニケーションがあまり成り立たない環境だった。
コミュニケーションを医療現場に成り立たせなくてはいけないと感じた。
医療の裏側も見えてくる。  人手不足、夜勤の厳しさ 医療者も悩んでいる。
患者の言動で傷つく事があることが分かった。
こむるが発足1年で、新聞に載っていて、内容に共感して、想いを手紙に書いて送った。

当時25歳だった。 何でも自分でやりたい子供だった。
癌になったことによって多くの出会いがあった。
今を生きているという事がこんなに幸せなんだと、実感させてもらった。
どんな出来事も100% マイナスの事はない。 
必ず自分の肥やしになることって有るんだと知ることができたことは喜びでもあった。
電話相談の内容は幅広い。
病状の不安、薬の副作用、、医療者との関係作りがうまくいかない、納得いかない結果での解決の手段、等 お金の相談等(相談のうちの15%)は増えてきている。
53000件の相談があった。 20000件の相談を担当する。

失明の相談 深い悲しみの声  死ぬ準備を手伝ってほしいとの相談 
80代の男性 最愛の妻を亡くした人の相談 等々。
何故相談するにいたったのか、詳しく聞いて、問題整理の手伝いをして、人に依って問題に対する想いが様々なので自分の中で考えてもらって、情報提供する。
納得いかない結果になって、説明はなかったのかと聞くと、説明はされたというが、1時間説明を口頭で受けている、専門的な話をするので、全て理解して記憶にとどめる人は少数派だと思う。
聞いていないという人の大半は聞いていても理解していなかった、こういう事が結果としては説明を受けていなかったと言う事になる。
情報の共有化が為されていない。
インフォームドコンセント 1990年 日本の医療に発展させてゆく必要があるとの報道があった。
どんな病気、病状でも、患者が望めばきちんと説明を受ける権利がある。
説明すること、といって解釈されている。(一方通行的)
先ずは概要説明、次に詳しい説明(質問もその時までに事前に用意) 落ちついた段階でしっかり話ができれば実りの多い時間になると思う。

コミュニケーション 双方向性 患者側からの医者に対する怖さ、思い込みのずれが生じる事もある。
患者側からのコミュニケーション能力を高める必要もあるのではないか。
人に伝えるときにきちんと言語化する努力をする事も必要、語彙を増やす。
今は余命まで含めて話す時代になった。
治療の選択肢も複数あるので、医者には言えない場合もある。(効果がほとんど同じでそれぞれ一長一短がある治療法など)
患者しか選べない時代になってきているので、しっかりとしたコミュニケーション、理解が必要。

賢い患者になる為の10ケ条
①伝えたい事はメモして準備
②対話の始まりは挨拶から 人間関係の基本は挨拶
③より良い関係作りはあなたにも責任がある
④自覚症状と病歴はあなたが伝える大事な情報(特に子供の自覚症状は自分で言う様に教育  が必要。)
⑤これからの見通しを聞く (治療期間、できなくなる事、治療後に日常生活への影響)
⑥その後の変化を伝える努力を(悪くなった事だけでなく、良くなったことも報告する)
⑦大事なことはメモを取って確認(余白のあるメモを用意、質問、答え、+αの情報が得られて、  それをファイルしておくと貴重な情報ファイルができる)
⑧納得できない事は何度でも質問する(嫌な思いをさせる様な言い方ではなく工夫した質問)
⑨医療にも不確実なことや、限界がある(病気になった-の状態をを+に転じてほしいと医療に受 けにくるが、せいぜい0になったら好しとしてほしいとの本音を聞く事がある、過度な期待をしな い、完壁ではない、絶対ではないと理解出来ると見方は変わってくる)
⑩治療方法を決めるのはあなたですが、一人で悩まないでください(よく相談して、アドバイスを 貰いながら一緒に決めてゆくが、最後に結論するのか患者さん)

高齢になってくると判断力が衰えてくるので、どこまで治療を望むのかなどを身近な人と話し合っておくことは必要です。
命の問題に対してはしっかり向き合っておくことはとっても必要なことですね。
自分の命を振り返って、きちんと生きてきたなあと、そう思って死ねたらいいと思って、そういう事を感じっせてくれたのは病気でもあった。
大人になって急に賢くなろうといっても、難しいので子供の間から賢い患者になる練習をしないといけないんじゃないかと思う。
ツールがあったら学校の先生でも養護教員でも出来るのではないかと、小学生向けの副読本を作る様なプロジェクトチームを立ち上げたいと思っている。