2014年5月11日日曜日

花戸貴司(医師)         ・最後まで我が家で暮らしたい

花戸貴司(東近江市永源寺診療所長、医師)   最後まで我が家で暮らしたい
最後まで健康で我が家で暮らしたいと願う人は多いですが、かなえられる人はごくわずかです。
14年前、琵琶湖の東側に広がる東近江市の人口約6000人の永源寺地区に赴任した花戸医師は寝たきりや、一人暮らしの人の為に看護師、ヘルパー、薬屋さん、マッサージをする人などと共に毎日の様に白衣を脱いで訪問診療、訪問ケアーを続けています。
今日で27人の人を看取った花戸さんは皆でそばに寄り添い、見守り、見送り、安らかな最期の寝顔を見ると、死は怖いものでも、敗北でもないと言う事が解ると言います。

赴任した平成12年4月から訪問診療を行っています。(14年間)
今日は5軒、多い時は10軒回るときもある。(今日は緊急が1軒)
訪問して「大丈夫ですよ」、と言ってあげると安心してもらえる。
寝たきり、癌、認知症、一人暮らしなど色々な方がいます。
家に行くと、若いころ、生き甲斐とか、全てが見えてくるので、診察室よりも、いろんなことがうかがえるので、患者さん自身の病気以外のことを沢山教えてもらう時間になります。
家にいて自分の好きいな事をやってもらう事で元気が増えてくるのかなあと思います。
高齢の方は話を聞いてもらいたいのだと思う。
看護師、ヘルパー、薬屋さん、ケアーマネージャー、マッサージをする人などと一緒に患者さんを支えている。
お互いが連絡し合う、連携する事で患者さんがより安心して生活ができる。

地域の人達の近くに行くためには、白衣を脱いだほうがいいのかなあと感じて、白衣を脱いで訪問診療している。(診療所に来てから1年後には実施)
赴任した時の訪問診療の人は7人、現在は定期的に訪問診療しているのは80人
当時は月に1回だったが、現在は月に2~3回の人もいるので、延べでは年間1500回以上は往診に行っている。
年齢を2歳~99歳まで幅広い年齢で見させてもらっている。
病気も心臓、整形、消化器、脳外科、認知症、いろんな病気を見させてもらっている。
赴任前は、湖北総合病気で小児科、内科、等を担当。

病気がなくても地域に住む人たちがいやされる場所になればいいかなあと思います。
一人ではありますが、医療に対して、消費者意識を持たれていないと言うか、何でもかんでも、私に要求はされないことの方が多い。(地域の皆さんにも支えられている)
専門は小児科ですが、永源寺では在宅医療が専門の様に言われるが、答えることとしては永源寺、この地域が専門ですと、この地域の人が健康問題で困っている時は、誰に相談したらいいか、どういう様な介護、医療のスタッフを集めることができるのか、そういう事を14年間やってきているので、どの医者よりも永源寺のことを知っているので、私の専門は永源寺ですと言っています。
頼られる事は、嬉しさと、責任両方ある。
当初、高度の医療を提供する事が、医療の役割と思っていたが、皆さん決してそのように望まれているわけではないことが判った。

都会の方は、医療を消費者意識がどうしても強いのではないか。
都会では人と人の関係が薄くなった。
永源寺の場合は元気のうちから色々聞いている。
ほとんどの方はご飯が食べられなくなっても、寝たきりになっても家にいたいと、往診に来てほしいと言われる方が多い。
生病老死 老いを迎えた時に自分自身でどう過ごしたいのか、老いを治す薬は無いので、老いを迎えても、自分自身で自分のことはやるとか、自分の役割りを持っていると元気に生活してゆく。
老いを医療で何とかするのではなくて、老いを抱えていても、自分らしく生活おくれる、それをささえてゆくのが、私の役割りかなあと思います。

先には必ず死が訪れるが、お迎えをどこで迎えたいか、私は聞きますが、家でまいらしてほしいと言われるので、私が看取りますとか、そういう風に話をして、最後まで家にいて、家族の方も納得してもらいます。
原因が老いである場合が多いので、家族のかた、地域のかた全体が、家にいることが当然のことなんだ、そういう風に思われている。
子供の方が純粋で、おじいさん、おばあさんが段々弱ってくる、最後は息を引き取ってゆく、そういう姿を子供達に見せることが、生きてきた姿を見せることが大切なことと思います。

家にいて普段から接していると、おじいさん自身が生きてきた姿が子供達(孫)の心にはずーっと残っていると思いますので、身を持て命の大切さ、生きると言う事を次の世代に教えてくれる、命の教育なんじゃないかと思います。
小学校に行って、命の大切さを授業で教えています。
仕事以外に、支え合ってゆく、地域のつながりは 田舎の場合と都会では違っていると思う。
衣料、介護、等は行政で出来るのは限られているので、全てが我々に何とかしてくれと言われても、難しいので、その医療、介護、行政で出来ない隙間をどうやって埋めるかと言うと、人と人とのつながり、近所とのつながり、が大切だと思います。
患者さん、家族が納得してもらって、覚悟をもって、家で過ごされる、そういう事が大切だと思います。
どうやって安心して、家で生活ができるか、病院では安全ですが、(医師、看護師、検査など)、家にいた方が安心して生活ができる。

近所の人が精神的な支えとなっていただく事が多い。
自分の事は自分でやって、自分の生きがいを持った生活をして、一人ぼっちじゃない、そこが大切だと思います、お互いを支えるコミュニティーがあって、安心して生活をする、それが元気で長生きをしていただく事になる。
自分自身、人の役に立ちたいと思って、医師になったがどう役に立つか考えたが、地域の人たちを見ていると、自分自身がもっと地域の人たちに寄り添う様な仕事、そういう仕事をすることが役に立つ事なのかなあと思って、地域の人を支える、それが私の仕事だと思います。