2014年5月3日土曜日

アレキサンダー・ベネット(関西大学准教授) ・日本の武道に魅せられて

アレキサンダー・ベネット(関西大学准教授) 日本の武道に魅せられて
44歳 日本の武道を研究する学者で有ると同時に、自らも剣道7段、居合道5段、薙刀5段の武道家でもあります。
日本武道学会理事、全日本剣道連盟国際委員、国際薙刀連盟副会長も務め、NHKに国際放送を始め、英語の著書やインターネットを通じて、日本の武道の魅力を世界に発信しています。
ニュージーランド出身で母国で剣道の代表チームの監督も務めるベネットさん、なぜ日本の武道に惹かれるのか、その魅力はどこにあるのか伺いました。

「剣道ワールド」 インターネットだけでなく書籍も年に2回出している。
2001年ぐらいから出している。  当時剣道に関する情報がなかった。
目的は剣道の技術的なこと、歴史、文化、哲学的な情報を伝える。
色々外国語に翻訳して世界に発信している。
柔道、空手などは情報はあったが、剣道はあまりなかった。
大学では、日本人学生に対してと、留学生に対しての授業がある。
留学生に対しては、英語で日本の歴史、文化全般、武士道、武道の授業をやっている。
日本人に対しては比較文化論と武道論を教えている。

子供の時に柔道を少しやったことがあるが、関心を持っていた。(7歳)
本格的に武道に興味を持ったのは、日本に来てからです。
剣道の写真が入っていて、何だろうと思って、なまで見たのは高校生の時(17歳)
サッカーがやりたかったが、芝生がなくてできないので、日本の伝統的な事をやったらどうかとの話があり、剣道部があったので、見学に行って吃驚した。(汗の匂い、音、声)
恐さが有ったが、軽い気持ちでやってみようかと思った。
1週間で素振りだけだったので、止めたいと思った。
部活、ニュージーランドでは季節によって部活が変わるのでバリエーションがある。毎日ではない。
日本では部活は1種目で、練習は半端ではない。 きついだけで楽しいとは思わなかった。

日本の夏の初体験 (ニュージーランドは過ごしやすい 温度、湿度) 20分でめまいがした。
気合いを入れて先生にかかっていったら、先生が一瞬下がったので、勝ったと言う想いがあった。
その後も続けて、壁があり、逃げたが、逃げたら負けだと言われて、掛かっていって、やっているうちに、無心で打っているうちに、稽古も恐くなくなり、達成感がたまらなかった。
感動して涙が止まらなかった。
1年間留学が終えて、初段を取って、ニュージーランドで剣道部を造った。
最初4人で始める。 週1回稽古をした。 
うわさが広まって1カ月に30人ぐらい来て、道具を色々工夫してまかなったりした。
「武士道精神」を学べるのではないかと、聞いてきたので、最初は誤魔化していたが、そういうわけにもいかなくなり、再度日本で修業し直さないと行けないと思った。

吉川英治の宮本武蔵の英語版があり、「武道」、「剣の道」とはこういうものかと、日本で武者修行しようと思って日本に来た。
京都大学の大学院で学び、「武士道」についての論文で博士号を取った。
武道の国際化などを研究してくる。
文武両道、両方をやることが重要だと思っている。
武道、人間形成の道、武道をやる事に依って、自分の人間性を高めてゆく。
私にとっての剣道は人生のバロメーター、人間としての長所、弱点もある、それを明確に教えてくれるのは剣道、相手がいる、相手とのやり取りの中で、必ず一回一回の稽古は「一期一会」的なことがあり、学ぶ事がある。
色々反省する事がある。(完ぺきではない、間合い、打った後がだめ、瞬間の冴え、・・・)
武道は相手がいるからこそできる。  
勝たなければいけないが、相手は敵ではなく協力者、どうして負けるのか、自分に問題がある。
日常生活にも共通するものがある。(隙、弱点) 道場を出てからの方が大切かもしれない。

私にとって武道は人生の哲学の枠組み、「礼に始まって礼に終わる」
打ったその後はどういう態度を取っているかは審判がみている。 
反撃が有るかもしれない、と言う事を覚悟しないといけない。(残心  対応できる身がまえ)
残心がないと一本にはならない。(ガッツポーズはあり得ない  相手に対して失礼)
勝った人も、負けた人も、嬉しさ、悔しさなどを表に出さない。
日常生活でどのように生かすか、残心
道を渡るときに、右をみて、左を見て、もう一度左を見て(確認して) 渡る。(油断しない)
忘れ物、残心がない。  結局自分の責任、人のせいにしない。
剣道の教えを自分の日常生活に生かす、そうでないと道とは言えない。
武道には深い教えがある。

中学で必修化になる。 武道を通じて、日本の伝統的な行動様式とか、礼儀作法を学ぶ。
一番期待してるのは、本格的な厳しい武道を教えるのではなくて、限られた時間で、面白いところを教える、緊張感を持って相手に対する思いやり、信頼感と言う事が生まれるはず。
感謝、共感、残心的な考え方 をちょっと味わって、中には本格的にやろうということが出てくればいいと思う。
今の若い人は回りのことを意識しなくなっているので、共に生きているわけなので、周りのことをもっと意識してもらって、武道で学ぶことができるのではないかと思う。
いじめ、体罰 難しい問題 有る程度厳しさがないと駄目。
本当の武道ではいじめはないはず、一緒にやって強いきずなが生まれる、共感が生まれる。
指導者の問題が大きいとも思う。

海外では日本の武道はどう思われているか?
日本の武道は日本文化の輸出品でもっとも成功していると思う。
どんな田舎町にいっても日本の道場があり、やっている。
精神的な部分を求めて、自分の修行の道として励んでいる人も増えてきている。
武道、日本文化ではあるがその裏に 普遍的な素晴らしい教えが、残心、どこの国の人であろうと十分に日常生活に生かすことができる素晴らしい教えだと思う。
武道の国際化、日本性がなくなってくる。
勝利至上主義、 方法はどうでもいいから勝てばいい、と言う様な、武道精神に違反する様な事もあるかもしれないが、相手は敵ではなく協力者、自分と同じ道を歩んでいる人として、協力し合って、直してゆく。
国際化すると無くなってゆくのでは、と言う想いがあると思うが、外国から教わる事があるのではないかと思う。
打って反省する、打たれて感謝する、国籍関係ないはず、互いに勉強しあってゆく事が目的なので、普遍的な部分が、それこそが武道の美しいところだと思う。
そこのところを日本人にも気付いてほしい。

武道は人によって違う、私にとっての武道は私の人生そのものだと思います。