2014年7月4日金曜日

塚本勝巳(教授)         ・ウナギの卵を探し求めて40年(2)

塚本勝巳(日本大学生物資源科学部教授) ウナギの卵を探し求めて40年(2)
1年に3週間ぐらい船に乗る。
以前は今の様に沢山の航海期間が頂けなかったので、3年に1回、1カ月の航海が平均的でした。
成果が上がるにつれて、沢山の航海日数がいだけるようになった。
25歳の時に白鳳丸に乗る。 乗り組み員 30数名 研究者は30名ぐらいが乗る。 約70名
3交代で夜も昼も調査ができるのが基本。  10人3グループ 24時間体制。
1973年 ウナギの航海をやろうと機運が高まり、産卵場の調査をやろうと言う事で3月にウナギの第一次航海があった。 その時から参加している。(学生だった)
当時、台湾の近くでウナギのレプトケファルスが1匹だけ取れていた。
太平洋に船をこぎ出すのは、間違いのないところだった。
沖縄、台湾の海域が産卵場だろうと、云われていた。

南へ南へ、推定産卵場が移って行った。 
東へ東へ移っていって 最終的にグアム島の西100kmが産卵場だろうと落ちついた。
1967年に最初に1匹発見された。 
1991年 10mm前後の小型レプトケファルスが1000匹近く取れた。(フィリピン海のほぼ中央部)
そこから海流をさかのぼってゆくと、大体、西マリアナ海嶺が産卵場だろうと言う事になる。 
主席研究員と言う立場にあったので、論文を国内の科学雑誌に出そうと思っていたら、京都での国際学会にカナダの先生が来ていて、1986年に知り合いになっていて(当時はアユの研究)、1991年に小型レプトケファルスを沢山発見して、現在論文を書いているところで有ることを話したら、イギリスのネイチャーに出すべきだと言う事で、ネイチャーに論文を掲載してもらった。
その先生のおかげで、審査もフリーパスで取り上げられた。
カバー 写真も綺麗なブルーをバックに半透明なレプトケファルスが、表紙に取り上げられた。
世界の友人からいろんな電話、FAXを頂いた。

日本人がウナギに興味を持っていたと言う事がある。
1971年 盛大なシンポジウムが行われ、ウナギの研究者が全国から集まって、喧々諤々やりました。
シンポジウムの懇親会を新宿のうなぎ屋で行った。
デンマークのヨハネス・シュミットさんがウナギの産卵場所を発見した事に刺激されて、我々ウナギ好きの日本人も我々が食べているウナギは、どこから来ているのか、突き止めたいと思うのは当然です。
一番苦しかったことは?
1991年にネイチャーにだした論文があった時から、14年間ほとんど成果が出なかった期間があったが、その時は苦しかった。
ウナギの研究をやっていると、全てを知りたくなる。
分類、形態、集団はどうなっているか、系統、ウナギの先祖は、そのような事を調べてみたくなる。
ウナギの先祖は外洋の1000mから数100mに住んでいる、ふくろううなぎ、ふうせんうなぎ、のこばうなぎ、しぎうなぎとか口ばしがそっくりかえったような深海漁がいるが、そういうものが共通の祖先だった。
ウナギの一番近い親戚は外洋の深海に住んでいる深海魚。
深海で回遊しなかった祖先よりも、明るい餌の豊富な熱帯の川に偶然あがったウナギの母親の方が、沢山卵を持ったと言うのは、そういう意味なんですね。
回遊する習性が身についた。

ウナギの種類は19種類(亜種も含めて)
ヨーロッパウナギ、アメリカウナギ、南太平洋にも沢山種類がいる。
熱帯にだけ住んでいるウナギ、ボルネオウナギ、セレベスウナギ、等
親ウナギ、卵まで見つかっているのは日本ウナギだけ。
産卵期は夏の新月、産卵場所は海山。 新月仮説を立てる。
14年間は揺籃期と言っていいのかもしれない。
2005年プレレプトケファルス 生れて2日目のウナギの赤ちゃん取れる。
そのことにより海山仮説、新月仮説が証明できる。 時間、場所が特定できた。 
一番大きな事だったと思う。  
2008年 親うなぎ    2009年早朝に卵2個 採取に成功する。

養殖の可能性?
短絡的に、たたみかけられると、そうではないという気持ちがおこるが、将来的には、卵が取れたり、卵がある環境が判ることで、完全養殖の技術開発に大きなヒントを与えることになるし、卵の数
レプトケファルスがどのくらいいるか、そのような情報は、来年のシラスウナギはどのくらいか、とかが予測できるのではないか、そうすると計画的に養殖ができる。
親ウナギの産卵シーンを実際に見てみたくて、オス、メスがどのような行動をするのか、何匹ぐらいの集団なのか、行動学的な知見は、オスとメスをどんなふうに掛けあわせてやれば、いい卵、自然に近い卵が取れるのかと言う事になるので、野外での研究は、実際のラボのなかでの仕事に役立つ。
現在、解析中です。 ピンポイトに一瞬にたちあわなくてはいけないので、非常に難しい。
卵などよりもずーっと難しい。
プレレプトケファルスの環境、栄養 だいたいつきとめられている。
プランクトンが死んで、ごみの様になって、バクテリアの分解を受けた、マリンスノーと呼ばれるもやもやしているものを食べているのだろうと思う。
そういった餌は水を汚すので、どう応用していいかわからない。

日本人は世界のウナギの7割を食べている。
ウナギの養殖は、天然の稚魚を取って、それに餌をやって大きくしたのを我々は食べている。
(半養殖)
ウナギは気を付けて食べなければいけない食べもの。
ウナギの場合は天然のしらすウナギを大きくしているので、天然の材料をあんな風に大量に安くして、食べるようになってしまったら、それに耐える食材ではない。
海の環境が変わるのは、いかんともしがたいが、地球温暖化なんかに端を発していると思うが、
人間がしたことなので責任をもって何とかしなければいけないが、超難問です。
40年間はあっという間だった。  わくわくしながら、やってきた。
色々魚を研究してきたが、うなぎぐらい面白いものはない。 よくわからないから、引き付けられる。

大河内総長の甥が桜の蜜腺の研究をしているが、成功しても直接役に立たないような研究でも許してくれる、そういうおおらかさがあるところだ、そういう大学での研究を自分は大事にしたいと、そういう風なことをおっしゃった。
研究者になって、40年経ったが、大学での研究は 大河内総長がおっしゃったような、役に立たない研究、おおらかさがあることが、いい研究を育む下地になるのではないかと思う。
世の中が世知辛くなってきているが、短期的な成果を求められていると言う事は厳しいと思う。
おおらかに考えていい研究をしてもらいたいと思う。