2014年8月5日火曜日

実松克義(立教大学名誉教授) ・中米、南米の古代文明に魅かれて(2)

実松克義(立教大学名誉教授)  中米、南米の古代文明に魅かれて(2)
今日は、南米、アマゾン流域に残された文明の話です。
マヤ文明と距離的に近いと言う事もあるし、マヤ文明の調査が一段落したあたりから、次の目標として、アンデス地域に行ってみようと1997年の終わりごろに思いました。 
アンデス地域のシャーマンはどんな風なんだろうと、世界観、伝統、そういうものを知りたいと思いました。
アマゾン川、調べたところ、源流がペルーの南のミスミ山であることが判り、そこから起算すると6800kmぐらいになり、ナイル川より100kmぐらい長いと言う事が最近わかった。
(今まではナイル川が世界最長となっていた)
河川流域の広さは700万平方km弱、アメリカ合衆国と同じぐらいの広さになる。
ジャングルに覆われていて、よくわからないところがあるが、調査が進行しつつあり、かつてはこの地域はかなり高い人口密度を持つ地域だと言う事が判りつつある。
調査に依ることと、開発が進むとそれまでジャングルに覆われていたが、下に隠れていた模様が衛星写真で見つかったりして、人工的な模様ではないかと言う事になり、徐々に判ってきた。

一番有名なのがテラプレタ (ポルトガル語で黒い土)人工の土壌が存在する地域がかなりある。 
アマゾン流域の10%~15%は人工の土壌 テラプレタ  黒い、褐色の土壌 肥沃な土壌をつくって、其れを増やした形跡があり、そこで農業をやっていた。
(もともとは酸性土で赤い土で農業には不適)
いろんなものを混ぜて意図的に作った形跡があります。(科学的な方法)
ブラジルを中心に分布している。 ブラジル、アメリカで研究が進んでいる。
テラプレタ 2種類ある ①テラプレタ 真黒な土 ②テラムラータ やや褐色の土 
堆肥的なもの、排泄物、残飯を土にまいて、土壌が肥沃になってゆく。
本格的に広い地域に渡って、人工土壌を造ろうと、人工的に森を焼いて、炭を作って、熱帯の栄養価の低い処にまいて、肥沃にした。(テラムラータ)
アマゾン全域にわたって分布している。

アマゾン文明 13世紀~14世紀に滅びてゆく。
熱帯雨林だけではなくて、それと同じぐらいの面積の農耕地が存在していた可能性が高い。
衰退と共に農耕地が放棄されて、あっという間にジャングルに覆われてしまう。
マヤでも同じで、今はジャングルの中にしかない。
日本ボリビア合同学術調査プロジェクト 2005年から実際に始まって、2009年に終了した。
モホス古代文化 ボリビアの北東部 アマゾンの上流域 モホス大平原 南米で3番目に広く、ひろさが25万平方km 日本の本州と同じぐらい。 緩やかな扇状地。
古代文化の痕跡が残されていて、そこの一部を調査した。
2000年にこの文化があることを知った。
準備等があり、実際には2005年に調査を開始した。
建造物は無く、全ては土と水によって作られている。

テラプレン ナスカの地上絵に似たところがあるが、堤防、道の跡、水を制御するためのもの。
高さ2~3mぐらいでまっすぐで、長いものだと10数kmのものも発見されている。
全長は恐らく1万kmぐらいになるのではないかと思う。
それ以外に運河網  物凄い数の運河網 全長が1万km以上  
毛細血管の様に張り巡らされている。
運河は実際に交通網として使うのと、灌漑する施設として利用する。
定期的に氾濫するので、巨大な氾濫湖が出来てしまうので、運河と、高められた耕地が交互に在って、一つの模様を造っている。
高められたところに農作物を栽培して、その横に掘り下げた運河、灌漑用水、排水路が存在して、独特な工夫で古代モホス人が農業をやっていたようだ。
モホスだけで、少なくとも数100万人、1000万人の人口があった可能性がある。

痕跡の広大さ、居住地 (ロマ) 高められている処 2万個ぐらいある。
直径が10数mから1kmの広さの巨大なものがある。  
高さは最大で23mのものが見つかっている。
1年目に試掘、2年目に場所を変えてロマ・チョコラタリトで 中規模のロマを3年かけて発屈した。
土器が一番出てくる。 人骨も出てくる。 
かめ棺(直径70~80cm 高さも同じぐらい)、直葬のもの。(土葬)
複数の人骨が入ってるので、一度どこかに放置して白骨化したものを入れたのではないか。
この文化が滅びたのは西暦1300年前後。
一番古いのは、西暦1年ぐらいのものが見られる。

古代モホス大平原 非常に人口の多い社会が存在して、かなり高度な文化を持っていた。
土器文化、宗教文化を作り上げていた。
アンデスからは距離が離れているが、そこにもアンデス文明の影響がみられる。
アンデスとアマゾンは繋がっていた可能性がある。(行き来していた可能性はある)
一番驚嘆するのは、人造湖だと思う。
2000個ぐらい存在する。 最大のものは20km、幅10km
北東、南西の同じ方向を向いている。(理由は判らない) 
その方向にオリオン座があるので農業との関係があるのかもしれない。
2007,2008年 雨期に大氾濫している。 深いところは10m テラプレン ロマも水没してしまった。

西暦1300年前後に突然姿を消してしまうが、旱魃、大洪水などが考えられるが、旱魃ではないかと思われて、ロマが放棄されて、依り良いところを求めて、移動せざるを得なかったのではないか?
文明の、あるパターンがあって、滅亡の直前に急激に規模が大きくなる。
マヤ、アンデスでも言えるし、アマゾンの場合でも恐らくそういう事が起きた可能性がある。
食料生産の技術が革新的に進む→大量食料の生産が可能→人口が増える→もろくなる、滅亡しやすくなる→大干ばつ 大量に死者が出る。 
疫病なども起き、悪循環が起きやすくなり、そういったことが起きた可能性はある。

現在のアンデス文化 シャーマニズムを調べると、古代アマゾンの影がある。
チチカカ湖の南のほう、ボリビア領 古代ティワナク文化の遺跡が残されている。
最初の発祥は紀元前1600年  段々大きくなっていって、最終的に滅亡するのは西暦1280年前後だが、大干ばつで滅亡する。
古代ティワナク文化はアマゾンの文明の影響を受けている。
土器に古代の王をかたどったものがあり。口にボタンみたいなものが、下唇に付けた物があるが、パラグアイのグアラニー族が存在するが、グアラニー族の習慣の中にも残されている。
アンデス地域とアマゾン地域の中間地帯の発掘をすると、土器が出てくるが、最初の層はスペインの植民地時代の土器、その下はインカ時代の土器、その下はティワナクの土器、一番下の層からはアマゾンの土器が出てくる。
行き来があったことを証明する様な物が残されている。
アンデス文化の起源はアマゾンではないだろうかと言う気がして、始めた。
エル・ドラード伝説 スペイン人は黄金を求めてインカを征服、アマゾンにも入り込んでいった。
インカの伝説の中にも古代アマゾンに存在した非常に大きな古代帝国の話がある。
そういう風にして繋がっている。

アマゾン流域では、一時期は毎年四国に相当する面積の熱帯雨林が破壊されてきた。
アクレ州 リオブランコの街の近辺で物凄い数の地上絵が見つかった。
土地改良に森林を焼いて炭で土地改良を行ったようだが、やり過ぎてしまった可能性はある。
マヤも狭い地域で、大きな人口密度を持つメガロポリスを作り上げていた。
周りの雨林は全部消滅してしまって、残るのは農耕地のみで有った可能性は高い、最後には大崩壊を起こして文明が崩落した可能性はある。
アンデス文明に関しては、自然の破壊をやり過ぎた為に文明が滅びたと言う事はないと思う。
厳しい気候環境なので、自然が人間の膨張に歯止めをかけていたと言う事はあると思う。
自然の恵みに対する感謝を忘れないという儀式を定期的にやっている様で、まともな文明で有り続けた。
アマゾン文化は、乱開発をし過ぎたために、文明が崩壊してしまったと言う事はあり得る。
人間の業の深さ、人間は一度何かを始めると、判っていても最後までやめられない、滅びるまでやってしまうという事は有り得る。