2014年10月12日日曜日

杉岡幸徳(作家)         ・読書会が私を変えた

杉岡幸徳(作家)   読書会が私を変えた
東京外語大学ドイツ語学科の修士課程を修了した後、世界を放浪する旅に出ました。
その後全国各地の独特の習俗を持った祭り、奇祭に焦点をあてた本を出版するなどノンフィクションを中心に、執筆活動を続けてきました。
その杉岡さんが主催しているのが、東京読者会です。
この読書会、月に一回東京都内で行われているもので、参加者は事前に作品を読み込み、それぞれの感性で議論を繰り広げています。
杉岡さんは読書会で取り上げた本や、読書会のメンバーとのやり取りに啓発され、今本格的な小説を初めて執筆しています。
杉岡さんが3年間の読書会で掴んだものは何か、作家としてそれをどのように展開しようとしているのか伺いました。

文章に対する目が肥えました。 自分に対して、他人に対しての文章の在り方に、ついてちょっと厳しくなった。
大学ではドイツ語文学を専攻しました。
オーストリアの20世紀初めの詩人 ゲオルク・トラークル 27歳で亡くなった詩人が好きで、是非ドイツ語で読んでみたいと思ったので、ドイツ語を選んだ。
修士課程、ほとんどゼミで、中には話の脱線する教授がいて面白くて、それが読書会の原点になっているのかなと思っています。
ゲオルク・トラークルに関する修士論文を書く。 オペラみたいな作り方で自信作だった。
博士課程に提出したら、これは論文とは言えないと落とされてしまった。
博士課程に行く予定だったが、呆然としてしまって、アルバイト、海外旅行に行ったりした。
その後にものを書こうかと思った。
売り込みは苦手なので、ホームページを作って宣伝したので、売り込みの手間は省けたと思う。
レストランの紹介などの記事をやっていたが、クリエーティブではないので、面白くなかった。
直ぐに撤退した。
あるところから祭りの連載をやってくれないかとの話があり、私の文章は主観的な文章なので、勝手に書いた。

大学時代ロシアに旅行した。 
新潟(飛行機)→ハバロフスク(シベリア鉄道 1週間)→モスクワ
一日動いても風景は変わらず単調で、一日一時間の時差があるので、5日目に感覚がおかしくなって、このまま永久に列車から逃れられないのではと思い始めた。
一週間目に到達したときには涙が出てきた。
赤の広場(美しい広場と言う意味) 足元からエネルギーがはいあがってくる様な感覚があった。
それまでは堅苦しい、真面目な生徒だったが、ロシアに行った後、9月には学校に行く格好が従来スーツにネクタイだったが、汚いジーンズ、汚いTシャツ、サンダルで学校に行き始めた、自分の中で何かが消えたんでしょうね。

ライナー・マリア・リルケ詩人 彼は若いころは凡様な普通の詩を書いていたが、ロシアに行って精神的な変動を覚えて、帰ってからは革新的な詩を書く様になったと言われ、同様な経験をしたのかなと思っている。
格式、形式とかは、気にするのは止めました。(ロシアの大地によって解き放たれた。)
祭り 奇祭と言うがそんなに面白くなかった。
私は面白かった部分だけを自分なりの考えで、主観的に加工して作品として提示する。
宮古島のパーントゥ(現地語で怪物) 全身を泥で塗りたくって不気味な仮面をかぶったパーントゥが三匹出てくる。
それが住民を追いかけまわして泥を塗る。 それは面白かった。
客観的に書いたのではまったく面白くないので、私なりに考えてデフォルメして書いた。
如何に現実を傷つけずに、致命傷を負わせずに、こっちの主観で作品を作り上げるか、その狭間で苦しんで書いている。

2011年6月に読書会を始めた。
もう一度昔読んだ文学作品をもう一度読みたくて、一人ではなく読んだ人達と意見交換をしたかった。
ブログを作って古典的な名作をテーマとして決めて、読んできて、何月何日に喫茶店に集まってくださいと参加者を募って、当日その本について話し合う。
最初4~5名で10名ぐらいで安定していたが、1年前から20人にしています。
年齢は13歳~60歳ぐらいです。 男女比は半々ぐらい、サラリーマン、OL、主婦などです。
月1回で38冊ぐらいになる。  フランツ・カフカの「変身」 
何を意味しているのか判らないし、皆さん悩んでいました。
いろんな感性の持ち主がいる。
阿部公房の「砂の女」 
半分ぐらいはこの男の様に逃げないという意見の人がいた。(女性の方が多かった)
我々の実生活を誇長して表現しているだけだと思う。

私が司会をしますが意見は否定はしない。 
いろんな意見が混在したまま進んでゆく、終わってゆく方が面白いと思う。
2時間で行う。
地位が人格を作る。 リーダーとして話を纏める、盛り上げる方向に変わってきた。
文章に対する目が肥えてきた、より美しい文章に目を開くようになってきた。
小説を書こうと思っている。
突然或る構想が浮かんで、絶対に形にしないといけないと言う衝動に襲われまして、現在書いているが8割近くになる。
文学賞に応募して新しい道を開こうと思っている。
人物に名前もないし、場所もわからない、と言うシュールな作品です。
私はオスカー・ワイルドが好きで「芸術は芸術のための芸術、芸術は何も言わなくていい、美しければいい。」といっている。
テーマは無い方がいい、あったとしても著者は言わないほうがいいと言うのが私の考え方です。
展覧会、音楽会にいって、感想を話し合うと言う事もやっていきたいと思っている。