2014年10月22日水曜日

楠 美津香(女優)         ・一人芝居で演じる”超訳”シェークスピア劇

楠 美津香(女優)     一人芝居で演じる”超訳”シェークスピア劇
1962年東京生まれ、横浜放送映画専門学院(日本映画大学)を卒業後、お笑いの道に進みます。
コンビを組んで舞台に立ち、放送作家としても活躍しました。
シェークスピアに出会ったのは15年前、知り合いの舞台でマクベスを見て、言葉のおもしろさに魅かれました。
楠さんは37あるシェークスピアの作品全てを自分の言葉に表現し直してたった一人で何人もの登場人物を演じ、芝居を行っています。

マクベスを実際に見て興味を覚えた。
マクベスは情けなくて面白い人物だと思いました。
悲劇なんだけど、喜劇ですね、こんなに面白いんだったら、これをやっちゃおうと思った。
これが面白いのならシェークスピア37作品全部やろうと思って、その場で全部やりますと言って、全部やってしまった。
2000年から始めて、一つの季節に1つずつ作れば10年で37終わると言う計算のもとに行った。
参考にさせてもらってるのは、小田島 雄志先生と坪内逍遥先生です。
言葉はちょっと変えて、語尾を変えているだけ。しゃべりやすいように変える。

シェークスピアはあらゆるギャグを作った人だと思っている。
もともと皆が知っている物語だったりする。(ギリシャ神話だとか)
シェークスピアはギャグをそこに入れた。
喜劇から悲劇になってゆく、これは日本でいうと山田 洋次監督、最初笑わせてから泣かす、喜劇の王道、これをシェークスピアはやっている。
大衆演劇として作っている。
シェークスピアは手袋職人の子供として生れてからロンドンに行って、大ヒットの劇作家詩人になった人なので、二つの世界を知っている、庶民の世界と、王様が面倒みる劇団まで出世したので、庶民世界、国王貴族の世界も知っている。
庶民の笑える部分も作っているし、卑猥なところもいっぱいあるし、歌も出てくるしどこから見ても面白い。
言葉は美しいが下世話な世界をうんと描いている。

高校の時美術部だったが、2年の時に部長で周りにいなくて、一人だけだった。
お芝居をやらないと友だちに誘われて、やったら面白くて、横浜放送映画専門学院に行く事になる。
うつみけいこ師匠の漫才の授業があり、そこに来て、授業で組んだグループが受けて、TVまででて、1年やって駄目ならやめようと、始めたら仕事が来るようになって、やっているうちに解散したりして、そのうち舞台出るのは止めて、放送作家をしたりしているうちに、夫の一人コントを手伝ったり、台本作ったりしているうちに面白くなって、其れから一人コントを始めた。
物語をやりたいなあと思う様になって、講談の友だちの舞台を見ていていいなあと思った矢先に、マクベスを見た、これをやろうと思った。

最初1カ月で本を読んで、次に台本を作る、最後の1カ月でセリフをしゃべれるように練習をするという時間割でやっていました。
難しいのは神様の名前、悪魔の名前でこれが探し当てるのが大変だった。
一番好きなのが「ばら戦争」 連続した戦国絵巻 リチャード2世から始まって、ヘンリー4世ヘンリー5世ヘンリー6世 最後がリチャード3世で完結する。
(1455年から1485年の30年間にわたって「赤ばらランカスター家」と「白ばらヨーク家」とが王位をめぐって争ったのが「ばら戦争」)
リチャード2世の時はヨークとランカスターが国王を守っている。
リチャード2世はタイプが詩人で政治には向いていない。 
ヘンリー4世という武党派の実力者に王位を奪われる。
ヘンリー4世の時代は活躍しないが、ここで活躍するのはハル王子(ヘンリー5世になる後継者)で、この人がめちゃくちゃ不良で、不良息子に悩むのがヘンリー4世の物語。
ハル王子はロンドンの繁華街で遊びまくっている。

父親が死んで後を継いだ時に、ガラッと豹変する、凄くいい国王に成ってしまう。
ヘンリー5世が英雄で、トップの条件です、これを見ればどんな企業もトップになれるという様な、ノウハウが書いてあるようなのが、ヘンリー5世の戯曲です。 
ヘンリー5世は35歳で亡くなるが、後を付いたのがヘンリー6世、生後9カ月。
周り中が国王代行をやりたがる。
ヘンリー6世パート2でお互いにつぶそうという会議がずーっと行われる。
ヘンリー6世パート1の最後に出てくるマーガレット(フランスシャルル7世の王妃マリー・ダンジューの姪)をサフォークが捕虜にする。
サフォークは悪いことをもくろむ人でマーガレットを自分のものにしたくて、国王と政略結婚させてしまう。
ヘンリー6世は戦争を止めましょうと行っているが、マーガレットだけが戦争遂行する。
リチャード3世の時に魔女の様になって出てくる。
パート3で道化役をやって行くうちに、ラストに行くうちに、俺が狙っているのは国王の座だと言って、手に入れるためだったら何でもやってやるという事で、言い始めて、リチャード 3世に成る。
8作品に渡って裏切り合戦、寝返り合戦。
リチャード3世は最終章なので、なんで争っているのかわからないというところが、最初から話をしていると全部判る。

「アテネのタイモン」 皆にプレゼントを上げて、タイモンのところにたかりに来て、執事がもう家にはざいさんがありませんということになるが、大丈夫僕には友達がいっぱいいるから、今までの貸しを返してもらうからと言う事で行くが、口実を作って返してはもらえない。
タイモンが宴会をするという事で皆が出掛けるが、お湯を並べて、皆にお湯をぶっかけて、馬鹿野郎と言って山に行ってしまって、人間嫌いになって暮らすという、面白いもの。

父親がお笑い番組が好きで子供のころから一緒にみていたが、その時に記憶したギャグが37作品の中に全部出ている。
自分でよくわかるのがギャグで、シェークスピアは庶民だったので、庶民が笑えるギャグが作れる。
散歩しながらセリフを練習をしたり、子供を砂場で遊ばせながら練習をしていた。
繰り返し繰り返ししてセリフをおぼえていった。
芝居と主婦業の両立は出来ていないと思う。
本番が有ると洗濯物が山の様にある。
近松門左衛門 人形浄瑠璃 出てくる男が情けないことは、シェークスピアと似ている。
女は観音様にみたいなものが出てきて、シェークスピアとは違う。
シェークスピアは歴史劇だが、歴史を借りてきているだけで、シェークスピアが面白く人物を作ってしまっているので、私がどのようなリチャード3世をやってもどれもそうかもしれないという事ですよね。
シェークスピアのテーマは再生、人が沢山死ぬが、又蘇る、円を描いているのがシェークスピアの世界、転落する人生と又上に上り詰める国王に成る、ホームレスに成る、また再生するというこの円です。
人生の中で起こることがちりばめられているのがシェークスピアです。