2014年10月8日水曜日

遠山昭雄(介護紙芝居研究者) ・現場から生まれた介護紙芝居

遠山昭雄(介護紙芝居研究者)   現場から生まれた介護紙芝居
埼玉県川越市 東京経済大学卒業後に、介護施設の職員になり、16年前に介護に紙芝居を生かそうと考えました。
当時は子供用の紙芝居が多かったために遠山さんは、高齢者や介護に適した紙芝居を求めて出版社等に粘り強く働きかけました。
その結果これまでに紙芝居18作品が出版され、今では介護の現場で幅広く使われていると言います。
紙芝居には遠山さんが介護の現場で33年間体験してきた思いや工夫が込められています。
現在、遠山さんは仕事は退職しましたが、お母様の介護の傍ら紙芝居のボランティア活動を続けています。

介護には興味はなかったが、友だちから人を求めているところがあると、そこ行く事が介護の世界に入ってゆく入口でした。
施設は身体障害者の養護施設で、ほとんどが脳性麻痺の人達でした。
今の介護とはかけ離れた仕事でした。
大学でゼミナールが心理学、卒論がホスピタリズムでした。
身体障害者の養護施設が閉鎖的で、当時精神医療では解放化が叫ばれていた。
夜勤の度に亡くなるという事にぶつかって、かなりショックでした。
人の生き死にに関係ない仕事をしたいと思った、自分が働きかけたものによってものが具体的に残る様な実感を得たかった。
職業訓練で木工の勉強をしたが、木工で食べてゆく道は厳しい事も判って、老人ケアに辿り着いた。
老人ケアに移ってからは、毎日のようにレクリエーションをしなければならず、メニューを考えた時に、街頭紙芝居を思い浮かべた。
街頭紙芝居は昭和5年に始まったことが判って、それに引きよせられたのは、私の世代より上の世代、今のお年寄りはほとんど紙芝居に吸い寄せられたのではないかと思って、レクリエーションの時間に紙芝居をやれば、盛り上がったりするのではないかと思った。
紙芝居をやってみて、がっかりするような結果だったと思う。
お年寄りを喜ばせる様な作品選び、演じ方がまだ出来ないのかなあと思いました。
作品を探し廻ることになったが、本屋さんに行っても無く、図書館には置いてある。
子供向けがほとんどで、それが壁だった。

紙芝居文化推進協議会があるが、そこの会員になったり、全国紙芝居まつりというイベントが一年おきにあるが、そこに参加したりしていた。
手作り作品の中から、大人が喜んでもらえるような作品を探して、製作者と交渉してコピーして出来れば出版できないかと、出版社に交渉を始めた。
認知症にきく紙芝居は出来ませんかと、作家の人には話したことがあるが、「えーっ」と言われた。
出版社もリスクがあり、出版社もなかなか踏み出してくれる、と言う事はなかった。
「始めよう老人ケアに紙芝居」と言う本を出してもらった。(私の監修で)
セミナーを開催して、現場で働いている介護職と、紙芝居関係者 半々ぐらい来てくれて、高齢者向け介護紙芝居というジャンルを何とかしたいという機運が生まれた。

或る程度売れないといけないので、リスクはあるが出してみようという事になる。
介護紙芝居は全作品18作品。
「金色夜叉」人気がある。  尾崎紅葉の代表作 
(紙芝居で熱海の海岸の一場面を読んでもらう。)
「お茶にしましょう」→言葉遊び お茶 ちゃぶ台 大福 それをきっかけに会話になったりする。
「連れション」→3人の子供の神様が出てくる話。 おしっこの出具合。
介護紙芝居 作品の内容、演じた時に何らかの形で、ケア的な要素が有っていいかなあと思う。
遊び、楽しさがあって娯楽性に富んだ内容や演じ方であるという事が一番望まれる。
双方向の関係、やり取りが生じやすい作品が理想的かなと思います。
それが介護につながっていけたらと思っています。

盛り上がるときも有れば、そうでないときもある。
紙芝居関係者の区分の仕方、参加型と物語完結型があるが、ほんらいの紙芝居は物語をきちっと伝えることが本質的なものかもしれないが、介護現場では遊びの要素、双方向の関係、観ている人たちの横のつながりを作りだすうえでは、遊びの要素を取り入れた参加型の紙芝居を多く活用するという事になります。
認知症の人が多い場合は参加型、童謡とか唱歌が入っていて、皆で一緒に歌いながらストーリーが展開してゆく作品になっているので、そういう作品を多く利用する事でやっています。
「金色夜叉」など大衆演劇路線といっているが、若いころ記憶した内容をもう一度紙芝居で演じて、そのころを思い出してもらうのが有効かなあと思っています。

アイコンタクト取れるように、お年寄りと目を合わせるように工夫している。
紙芝居のボランティア活動をしている人達のサークルが出来てきて、介護施設にボランティアで入りこんで紙芝居を演じることが増えてきています。
堺 正一さん(元県立盲学校校長  6月に放送した「高齢者のケアに紙芝居」)も同じ思いをもっているということを知って吃驚していますが、情報交換をしています。
紙芝居イベントに参加すると、紙芝居友だちができてきて、自分が支えられている様な気がします。
紙芝居が今後ライフワークになるのではないかと、感じがしている。
出版以外でも演じるという事を通して楽しみを持続できる様な気がする。
絵は周りに描ける人がいるので、紙芝居の脚本が書ければいいなあと思います。