2015年6月13日土曜日

中川尚史(准教授)        ・”抱擁”するニホンザル!?

中川尚史(京都大学大学院理学研究科准教授)          ・”抱擁”するニホンザル!?
今年の春、日本ザルの研究で新しい発見が有りました。
宮城県の金華山、鹿児島県の屋久島で日本ザルは抱擁し合う、そういう文化が有るという事でした。
ニュースでも伝えられ多くの人に衝撃を与えました。
発見した京都大学大学院理学研究科の中川さんに伺いました。

群れの中で緊張が高まるとお互いに抱擁して、争いを避けようとしている。
宮城県の金華山、鹿児島県の屋久島、共通点 抱き合うのかが見られ、毛づくろいをして終わる。
金華山は対面して抱き合う、そのあと身体を大きく前後にゆする、抱き合い方。
屋久島は対面の以外に、体側から抱きつくパターンと、稀に後ろから抱きつくパターンの3つが有る。
金華山の様には大きくゆすらない、相手の体を掴んだ手のひらを閉じたり開いたりする。
宮城県の金華山、鹿児島県の屋久島 2か所とも表情はリップスマッキング、口を突きだして音を発する。
そこそこ仲がいいという間柄の時に抱擁してから毛づくろいをする。
多くはメスで、金華山の方ではオス同士、オスメスの抱擁はほとんどなし、屋久島の方はオス同士は少しはあるが、ほとんどメス同士で行う。
先ずは緊張をほぐすための行動、そのあと毛づくろいに移る。
毛づくろいはどこの日本ザルでも行う。
抱擁は一つの型に決まっていない。

小学校4年の時にアフリカサバンナのTV番組が有り、シマウマ、ライオン、ゾウ、等の映像にはまってしまって素晴らしい世界だと思った。
彼らの生態を調べる研究者になりたかった。
京都大学に行けば、アフリカに行けると思って、理学部に入ろうと思いました。
1浪しても入れず、農学部に入って、その後大学院を受けて進むことができた。
杉山幸丸先生から日本ザルの研究をしっかりするように言われて、サバンナの夢はまだ実現する事は出来なかった。
金華山に行く事になる。
ブナの大豊作の年で、無くなってきたときに猿はどういう振る舞いをするのか、考えた。
採食速度 ブナを拾う速さ 10月は4秒に1個  2月中旬には12秒に1個となる。
採食時間割合 食べる行動にどの程度時間を費やすのか調べると7割を費やす。
1986年に博士課程の1年でサバンナに行き始めて、断続的に1997年まで行っていた。

平成16年助教授になり、日本ザルの研究を再び始める。
文献上も抱擁は無かったが、金華山に行くと猿が抱き合っている。
不思議に思って、宮城教育大学の先生に伺ったところ、金華山だけでなく、下北半島、石川県の白山の猿もやるよと教えてもらった。
抱擁行動のデータを取るようになる。
中村美知夫さんがチンパンジーの社会行動の文化の研究をしていて、道具使用の文化のほかに社会行動について研究をしていた。
ソーシャルスクラッチ 背中を掻いてもらうような行動はチンパンジーであるところと無いところがある。
ある場合でも、普通に背中を掻くタイプと指先でつっつく様なパターンが有る。

日本ザルのイモ洗いの発見 2歳の雌が小川に浸けると砂が取れ、海水に浸けると砂が取れるし、塩味がついてそれを学習して、同年齢に広がり、母親の世代にも広がって、集団内に広がることになる。
文化人類学者の人からだいぶ反対される。(文化とはいえないという批判)
イモ洗いが6割に広がるのに4,5年掛かっている。(模倣ではなく個別学習である)
抱き合うと言う事は、同じような行動をするという事、社会的な伝達が起こっているという事が考えやすいそういう文化だと思っています。
金華山、屋久島の違った行動パターンが同じ機能でないと、文化だとは言いづらいと思ったので同じ機能だという事を、証明する必要があると思った。

文化はある効用の発明と言うものが有って、発明されたものが伝達されて集団中にかなり広まって、世代を越えて続いていくのが、文化だと思います。
日本ザルの系統の旧世界ザルと、類人猿をふくむ人の系統と分かれたのは2500万年前と言われるが、そのあたりまでは社会行動の文化と言うものを、さかのぼって考えていいんだと思います。
大阪大学の中道先生と一緒に、日本ザルのまれな行動について、集めています。
まれな行動の広がる過程が見られればと思っています。
岡山県の勝山 大阪大学が研究している調査地での研究が今後の計画です。
人間は霊長類の一員なので、他の霊長類と連続的な部分は多々あるので、チンパンジーとの線引きとか、線引きを控える必要はあると思います。