2015年10月14日水曜日

鳥塚 亮(いすみ鉄道 社長)    ・「鉄っちゃん社長」赤字ローカル線を再生

鳥塚 亮(いすみ鉄道 社長)    ・「鉄っちゃん社長」赤字ローカル線を再生
いすみ鉄道は千葉県いすみ市と大多喜町27kmを結ぶ第3セクターの鉄道です。
社長の鳥塚さんは55歳です。
航空会社で運航管理をしていた2009年いすみ鉄道が行った社長の公募に応募、社長として採用されました。
当時いすみ鉄道は赤字経営が続いていましたが、リストラはしないと宣言したうえで会社再建に乗り出し、少ないコストでできるムーミン列車の導入を手始めに次々に新しい仕掛けを打ちだし、社長就任からおよそ1年で会社存続のめどを付けました。
大の鉄道ファン鉄っちゃんを自称する鳥塚さんが赤字ローカル線をどの様に 再生させたのか、その道のりや魅力あるローカル線をどう築いてゆくかなどを伺いました。

いすみ鉄道は旧国鉄きはら線を第3セクターに転換した会社です。
懐かしいと言う様な演出をしてくれている車両、キハ形は旧国鉄の車両。 
かつて国鉄のものを走らせればこれは全国区ではないかと思う。
房総半島でも海岸線を走るわけではないので、景色にアクセントを付ける意味で、焼き鳥屋、某有名タレントの実家などポイントとして案内放送をやっている。
昭和35年生まれですが、昭和39年に東海道新幹線が開業して、物ごころついた時から新幹線ブームで、親戚がおもちゃを買ってきてくれ、国鉄に入って運転するんだと思いました。
小学生時代はSLブームがはやって、映像を見ると、機関士の姿が一つの美学の様に感じた。
高校2年の時に国鉄に行きたいと先生に話したが、国鉄は潰れちゃうと反対されて、どうしても国鉄に入りたいのなら一旦大学に入ってどうしても国鉄に入りたいのならもう一度そこで受けるように諭されたが、大学卒業の時に国鉄の募集が無かった。(新卒は4,5年取らないとの方針だった)

鉄道が駄目だったら飛行機にしようと思った。(27歳で採用される)
輸送業務にかかわり、その後運航管理、計画の仕事をする。
最後は運航管理等を統括する管理職になる。
物事をトータルに見る、全体を把握する事、等が役に立った。
48歳の時にいすみ鉄道の公募があり、受けてみようと思った。
社長の公募の条件が700万円、潰れそうな会社から700万円も貰うというのはおかしいと思った。
面接の時にその思いを言ったら、面接官がむっとしたような表情で、落ちると思ったら、受かってしまった。
入ってすぐに3割カットしていまはやっています。
運賃収入が伸び悩んでいた状況で赤字だった。
社長就任の時に 二つのことを言いました。
①人員整理をやる事はない。 
②モチベーションを付ける意味で会社に対して自信を持ってもらいたいと言う事でこの会社をいい会社に勤めてるねと皆から言われるような会社にします、そのためにはブランド化が必要です。
いすみ鉄道をブランド化します。

地域の良さを生かしたいと思いました。 里山の景色、お花畑を走る、地域の人たちと仲良く暮らす、これはムーミンの世界だと思って、ムーミン列車を走らせようとした。
就任してから2~3カ月でスタートさせました。
有難いことに直ぐにTVが取材に来てくれて、大々的に取り上げてくれて、女性をターゲットにしたかったので、女性がすぐに来てくれて女の人がいっぱいになり、間違っていなかったと思った。
我々は素材を提供するだけで、理解できるかどうかはお客さんが判断してくださいと言う、そういうスタイルのムーミン列車です。
次に昭和のジーゼルカーのキハ形を走らせて、キハの中にレストラン、居酒屋、などの列車を走らせ、特製の駅弁を販売したり、都会人が求めているものがローカル線には有るわけです。
いすみ鉄道を残していてよかったと地域の人が思っていただけるそういうビジネス展開を主に考えてやっています。

枕木オーナー制度 枕木に自分の名前を書いて、書いたプレートを枕木に張り付ける。
インターネットで応募できる。 気になって必ず来るようになる。
車両のサポーター制度  来ても来なくても乗らなくても思いが膨らんでくる。
1~2両の列車が1時間に一本の世界なので、会社の器を考えて共感できる様なお客さんに来ていただきたいと言うのがこの商品のコンセプトになります。
2009年6月に就任、10月からムーミン列車を走らせたが、冬には来なかったが、春になって菜の花が咲きだしたらワーッとお客さんが来始めて、これはいけると思いました。
ローカル線は男性が従来お客さんだったが、女性をターゲットにして展開をしたら、たくさん来てくれてうれしかったです、手ごたえを感じました。
運転手の養成費700万円を自分が負担して運転手になる制度を立ち上げた。
当時、いすみ鉄道は国鉄、JRに行ったOBがいすみ鉄道で運転手をやった人がほとんどで、5年ぐらいで退職してゆくので、JRが全部電車になって、ジーゼル車の運転手の養成が急務だったが、八方塞がりだった。

自分と同じような鉄道が好きな人がこの日本に絶対いるはずだと思って声をかけてみた。
賛否両論が色々あったが、資格を取って仕事をする人たち、医者、弁護士、飛行機の操縦士等は皆最初は自分のお金と自分の時間と自分の能力を使って資格を取り、就職をするというのがこの国の資格制度です。
鉄道の運転手だけが違う。(大手鉄道はできるが、ローカル鉄道は難しい)
入ってきた人たちは高い志を持った人たちなので、チャレンジ精神は旺盛で勉強もしますし、職業に対するモラルは物凄く高いです。
訓練中の運転手を含めて14人います。
補助金は 上下分離 列車が走る路盤、信号機、踏切を含め設備関係を行政が維持管理(補助金)、鉄道会社は列車を走らせる部分で経営をしてゆく事が基本的な考え方。
定期券利用者は減り続けている。

今乗っている方は車に移向できなかった人で、列車が必要な方達で、観光客に乗っていただく事によって何とか運賃収入を補っている状況です。
関連事業でも補う事が出来るのではないかと頑張っています。
修繕費がかさんだりして、ここ2年間は赤字経営です。
純粋な意味の営業は赤字だったり黒字だったりトントンですね。
貢献にいろんな尺度があると思いますが、地域に貢献できているのではないかと思っています。