2016年2月10日水曜日

松田道生(日本野鳥の会理事)   ・僕と野鳥の50年

松田道生(日本野鳥の会理事)   ・僕と野鳥の50年


松田さんは1950年東京生まれ 大学卒業後、日本鳥類保護連盟を経て、日本野鳥の会に就職しました。
高校時代から始めた野鳥観察は50年に及び録音した鳥の鳴き声は340種類にのぼります。
NHKラジオで毎年放送されている夏休みこども科学電話相談の回答者としてもおなじみです。 松田さんと野鳥の50年、鳥たちとどんな出会いがあったのでしょうか 。  

栃木県霧降高原、朝の3時45分ぐらいに収録した小鳥達のコーラス。
コマドリ、きびだき、あかはら、ひがら、ほととぎす、かっこう、フクロウが鳴いていました。
夜明けの前に暗い時に鳥たちは活発に活動します。
朝は風がないので録音には最適です。
メモリーレコーダー 筆箱サイズで重さも500g位です。
性能は昔に比べると物凄いです。
地面に録音機を置きます。
鳥はさえずる時には場所が決まっています。
日本の鳥は約600種類で 340種類は録音して、後残りは鳴かない鳥で殆ど録音したと思います。
一番最初に録音したのはオオルリです。
オオルリは渓流が好きで昆虫も多くて、録音して帰ったら渓流の音しか聞こえてきませんでした。  
最近はコンピュータでその時のイメージを活かす様にノイズを取る事をしますが、自然の広がりが無くなるので取り除き方が難しいです。  
鳥が鳴くのは哺乳類で言うと雄たけびの様なものです。
島フクロウ 大きさは一斗缶位の大きさで世界で1000羽しかいなくて、北海道でも500羽位しかいない。
雪の降っている時に良く鳴く、マイナス10度位だったが、録音機も問題なかった。
静かな時ですと1.5km位聞こえます。
最初に雄が鳴き、直ぐに雌が鳴く、1時間行い、雌雄の結びつきを高める。
自然の中で聞いてみないとなかなかわからない。

山では熊とか猪が大変だと思いますが、小さいもの、じっと座っているのでダニとか山ヒル、などが大変です。
おおとらつぐみ 100羽位しかいない鳥で早朝 10分しか鳴かない。
手に小さな虫が止まっていて、蚊位いいだろうと思ったら、ブヨの仲間で後でグローブの様に腫れました。
自然の中に入ると自然の厳しさも同時に感じます。
如何に彼等に干渉しないか、という事がいい録音を取るコツでもあります。
小さい頃は昆虫などが好きで、生き物が好きでした。
板橋で生まれて当時は回りは田んぼでした。
いろんな生き物と話をしたかった。
動物文学のブームができてきて、「野生のエルザ」 現実だが外国の話だった。
中西 悟堂さんの野鳥記 それを読んだら、自然の中で鳥を見る変遷が含まれていた。
外へ出る世界があることを知って、そとで観察するようになった。
双眼鏡を買って、競馬ですかと言われてしまった。

最初荒川の河川敷で鳥を見る様になった。
野鳥の会は当時2000人で板橋区で2人だった。
明治神宮で鳥を観る会が1カ月に一回必ずあり、30人位が集まりました。(安心感があった)
2000年の頃、東京のカラスが増えて問題になったが、わたし自身カラスが嫌いだった。
カラスを見始めて、調査し始めたら、だれもカラスを調べていなかった。
5年間 近所2km四方調べたり、六義園(300m四方)ではカラスの巣が20個ありました。
東京の緑地を50m歩くとカラスの巣が1個はあり、住宅地では300mぐらい歩くとかならず巣がありました。
調べているとカラスと会話が出来る。
一度見て、一週間後に同じところに行くとカラスは私を覚えて、ここは自分のところだと怒った声で鳴きます。
はしぶとカラスは森のカラスで、森の中でお互いを確かめ合う声で優しく鳴きます。
近づくと、威嚇の声で鳴きますが、声の間隔が狭まると、怒りがさらに強くなります。

調査する中で、生き物と一緒に暮さないといけないという事を皆さんに知っていただきたいというアピールに役だったと思います。
カラスはかならず2羽でいることが判りました。
彼らが自然の中で生きていく事は厳しいことだと思うし、子孫を残してゆく、その仕組みが非常に見事だという事に気付きます。
キツツキが音を立てるが、これも雌を呼ぶが、丈夫な嘴を持っているというアピール、いいえさの有る所だというアピールでもある。
彼らの生活を考えるとそれぞれ理由がある訳で、理由が判った時は楽しいです。
子供のころはひ弱な少年でしたが、今は山道を4~10km歩くので体力はあります。
年を取ってくると耳が弱くなってくるので一番悩みです。
8000ヘルツという高い音でなく鳥がいて、鳴いているのに気がつかなかった。(やぶさめという鳥)
録音していると気が付く様になった。
鳥の繁殖について調査をしていますが、録音機が役に立ちます。
蓄積が出来たので鳥の声の図鑑の様なものを作ってみたいと思います。
気になっているのは去年日光で録音できたとりで「じょうびたき」、冬鳥ですが、冬になると大陸から日本に渡ってきて
日本で冬を過ごすので、本来さえずりはない。
ところが6月に鳴いていた。
聞いた事が無かった声で、あちこちで聞いたという話があり、日本の中で繁殖するのが見つかるかもしれない。
調べれば調べるほど判らないことがでてくる、一つづつ解明されることで、喜びが果てしなく続いている。