2016年10月22日土曜日

はた よしこ(ボーダレス・アートミュージアム、ディレクター)・障害者のアートの魅力

はた よしこ(ボーダレス・アートミュージアムNO-MAアートディレクター) ・障害者のアートの魅力
66歳 滋賀県近江八幡市 ボーダレス・アートミュージアムNO-MAのアートディレクターを務めています。
NOMAは障害者の作品アールブリュットと一般の作家の作品を並列に展示する全国でも珍しいミュージアムで、社会福祉法人グローが運営しています。
はたさんはこのミュージアムに平成16年の設立前から関わっています。
これまでに滋賀県内だけでなく全国のアールブリュットの作家と作品を発掘して世界にも紹介して、その魅力を伝えています。

ここは野間さんという方が住んでいた家です。 
ノーマライゼーション(normalization 障害者や高齢者がほかの人々と等しく生きる社会・福祉環境の整備,実現を目指す考え方。)とかけ合わせた名前です。
ブリュットはフランス語でワインとかがまだ完全に熟成していない、それがブリュットといって、まだ完成していない生のままの芸術という意味です。
ジャン・デュビュッフェという作家がいてその方が専門的な教育を受けなくても自由に自分の心の中に沸いて来る、そういうのが生の芸術ということだと思います。
障害が有る人も無い人も自分の中にイメージを形にしたいと言うことは一緒で、両方並べてみると、障害が特殊ではないんだと言う事を伝えたいと思ってこういうミュージアムを作る元になりました。(ボーダレス)
精神障害、知的障害が有る人も一般の人も並列に展示して居ます。

「楽園の夢」と題した企画展を開催中。
桜水孝一さん(精神障害の方)
大きくキリストが描かれていて下に人々がお互いに手を差し伸べあっている絵
彼自身がクリスチャンなのでクリスチャンの場面を一杯描いています。
岩瀬俊一さん(知的障害者の方)
黒地に銀色の細いペンでびっしりと人、髪の毛(螺髪のよう)、服が描かれている。
会話はほとんで出来ない方です。
画材は施設の担当者が用意し選んでもらいます。
山崎利幸さん(サラリーマンの方)
長く鉛筆の芯にアルファベット文字が彫ってある。
東健次さん(故人)
20~30cmぐらいの高さの円筒形の椅子の様な形をした陶芸の作品 9こある。くもを表現
三重県松坂市にオブジェぎっしりと並んでいる陶芸作品、35年ぐらいずーっと作ってきました。
松浦 萌 さん(20代前半の知的障害の方)
色とりどりのビニールテープを使っていろんな形を作っている、人、動物などが、数cmの大きさで作られていて、透明なアクリル板にその作品が貼り付けられている。
家でずーっと作っていたようで、直ぐ作ってしまうようです。

美術大学にいっていた人と障害者の人とは普通は全然違う世界だと思うが、自分自身美術を学んでいたが、近くにいた障害者の子が面白い絵を描いていて、凄いなあとその頃から注目した記憶が有ります。
頭の中にあるイメージを形にするということは共通しています、表現はボーダレスだと思います。
画用紙の下に小さい点が20個ほどあって、それがものすごい衝撃でした、知的障害の展覧会でした。(30年前)
一緒に描きたいと押し掛けて行ったが、役に立たないボランティアはいりませんと言われてしまった。
或るときすずかけ作業所と言いう知的障害の現場でした、兵庫県西宮市です。
そこに絵画クラブを作りました。
富塚純光さん(絵を描いてお話まで描きました)
舛次崇(しゅうじたかし)さん(ダウン症の方 何かものを置かないと描かない、あると描きやすいようです)

私は絵本、絵をなどを描いていましたが、バランスを考えたりして詰らなくなり、自分では絵を描かなくなりましたが、アールブリュットの世界にのめり込んでいって、絵を描かなくなっても十分幸せです。
欧米ではアールブリュットは作品の価値が認められています。
日本でも今は買いたいと言う人が増えていますが、散逸しないようにという事で売買はしていません。
日本でもアールブリュットの代表的な作家
澤田真一さん 陶芸作家  顔、埴輪の様な形に小さな突起がいっぱいついている作品
美術という概念が無く自分の心を落ち着ける、呼吸をするのと一緒です。(海外でも知られている)
本岡秀則さん  電車の顔 18段ある。
水谷伸郎さん 電車が紙折って立体的に作っている。7~9両
蒲生卓也さん  猫の作品 振り返る様にしてこちらを見ていて、等高線で描かれ立体感が有る。

2008年 スイスのアールブリュット専門の美術館と連携して現地で日本の作品を展示していただきました。
2010年、パリの市立美術館が主催してアールブリュットジャポネが開かれました。
沢山のお客さんが熱心に観ていました。
ダウン症の人は大胆な絵を描くが日本でも欧米でも一緒だった。
自閉症の方は細かいことに拘る、これも共通している、殆ど共通する事が多いです。
言葉で話さない、話せない、物を作ったり描くことは言葉の代わりなんですね。
殆どの人が消したりすることは一切せずに、一発で描きます、それは凄いです。