2017年1月3日火曜日

丹羽宇一郎(早稲田大学特命教授)・“三方よし”の精神で

丹羽宇一郎(早稲田大学特命教授)・“三方よし”の精神で
日本中国友好協会会長
1939年愛知県名古屋市生まれ。
名古屋大学法学部卒業後、総合商社伊藤忠商事に入社し、アメリカなどからの食糧輸入や生産に関わってきました。
その後社長、会長などを勤められたほか、内閣府経済財政諮問会議民間議員や国際連合世界食糧計画協会会長などを歴任されました。
2010年から民間人として初めて中国大使をされた経験をお持ちです。
丹羽さんには商社マンとして大切にしていた言葉が有ります。
近江商人が生み出した三方よしと言う言葉です。
「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方が良いと言う事です。
地球は今温暖化に依る気候変動、水や食料人口問題など多くの課題に直面しています。
こうした課題をどう乗り越えたらいいのでしょうか、伺います。

経済は売り手と買い手が有って、初めて成りたっていて、商売の基本は社会に取っていいという事が必要なんです。
150年前に近江商人が実行してきたことに大変感銘してきました。
マックスウェーバーの宗教と言うものと密接な関係が有る。
近江では昔は鍵をかけないで生活をしている、浄土真宗というものを担って信仰心の篤い所で泥棒とかが最も少ない県です。
日本にはお布施というものが有って、社会に貢献している。
近代的な資本主義という様になったのは、世間よし、三方の精神が有ったからで、そういったものがなかったなら、資本主義の発展はなかったと思う。
マックスウェーバーよりも近江商人の方が早かった。

家は正進堂という本屋をやっていました。
おばあちゃんが「嘘は泥棒の始まり」とか、「おてんとうさまが見てござる」とか、「南無阿弥陀仏」とかしょっちゅういっていて、頭の中に焼き付いていました。
本は手当たり次第にたくさん読んでいました。(商売の本なので綺麗に早く読む)
大人の本も読んでいて、小さいころからませていました。
両親は厳しかったです。
本を読んできていて、正義感が強くて、高校時代から生徒会などをやり、大学に入っても、不正義を許せなかった。
安保闘争の時も誰のためにやっているんだと、先生が理不尽なことを言うと授業をボイコットしろとか、正義感で突っ走っていて就職とかを一切考えなかった。
私は委員長をやっていて先輩が委員をやっていて、超一企業に就職試験に合格してから就職の1,2カ月前に思想調査をやられて突然キャンセルされる。
どうせ駄目なら一番最初のところを受けようと思ったら(3年生の7月)、そこが伊藤忠だった。
その日の夜に電報が来て合格だった。(伊藤忠がどういう会社だったかしらなかった)
6人同じ学校から受けたが、私だけだった。

名古屋にはいたくなかったので、最初から東京だった。
ストライキをやると言うことは、経営者に打撃を与えないとだめだといって、正論を吐いたらシーンとして、人事部長がきて、白羽の矢が当たったので秘書室に移動してくれないかといわれたが、
上司が言わないのに行くわけにはいかないと言う事で断りました。
それで食糧をやるようになりました。
平和、自由、貿易 これなくして日本は生きていけない。
グローバリゼーション無くしてはこれからは生きていけない。
日本の国是として、平和を守らなくてはいけない、自由貿易で塀を作らないで自由に貿易できる体制を作らなければいけない。
食べるためにどうするか、農業は国の宝、農業がしっかりしてない国で栄えた国はありません。
日本は農業を国の宝として大事にしなければいけない。
農民が自立して競争力のある物をやって行けると言う事は、別に考えないといけない。
どういう種子をどういう土壌でどういう気象条件で育てていくかということは理論的な科学がないと駄目です。

伊藤忠がインドネシアでやったが失敗だった、密林を開拓して畑にすると動物のえさになる。
実る頃には象は来るバッタは来る、動物が来るので駄目。
農業機械を使ってやると、部品が故障してどうにもならなくて、人力でやらないと駄目で、全部工業と歩調を合わせてやらないと駄目です。
日本は農業の国際競争力を付ける、亜熱帯に向いた作物をつくる、それは米、米の値段を抑えるべく農水省の方策は根本的に間違っている、出来るだけ作らない様にする方策は間違っている。
どんどん安くして坪あたりの収穫量を増やして、安い値段で売る、だが逆のことをやってきている、減反をして値段を高くする。
たくさん作って、輸出をすることを考えればいい。
7000万~8000万人が年に人口が増えてきている。
アフリカが今10億人だが30年後には20億人になるでしょう、アジア諸国も増えてゆき、何れ資源、食べものが不足してくる。
気候が崩れてきたり、地震、大噴火が起きると地球が大凶作になる。
自給力、農民と土壌をしっかりとする、反収を上げる、農水省の予算のことばっかり考えていて、出来るだけ安くたくさん作って余ったら輸出をすればいい。
日本の農家の10%ぐらいしか専業農家はいないので、専業農家を手厚く保護しての農業で食べていけるようにすればいいと思います。

地球の温暖化、東大教授の沖大幹さん 地球上の水が100%とすると、97%は海水、使える水は3%、その圧倒的な部分が氷河で、何十年後には全部溶けてしまうだろとうと言っています。
地下水は山の氷が無くなると、地下水がどんどん減ってゆく。
年に平均1000mmの雨量が、200mmを下回ると砂漠、日本は1700mmぐらいで恵まれている。
高知県が3200mmぐらい、北京の西は500mmを切っているでしょう。
毎日お風呂に入っている国民は少ないと思います。
地球上で地下水をくみ上げて農業をやっていて、枯渇してくると大変です。
以前4年間カリフォルニアで干ばつが起きて大変でした。
日本が輸入している1年分の農産物を全部日本で作るとなると琵琶湖2.5倍の水が無くなります。
小麦を1トン作るのに、水は1100倍、牛肉だと12000倍必要です。
中国が牛肉を食べ始めたことは恐るべき事なんです。
中国では、肉は世界の1/4を消費し始めている。
豚の2頭に1頭以上を中国が消費している。

放っておいた土地は駄目なので土壌を大切にしなくてはいけない。
量、値段ではなくて、質、生産の仕方を考えてゆくと、人間の頭にお金を使わなくてはいけない。
人間の心にインフラに投資しなくてはいけない。
GDP、人口もどんどん下がってくるが、日本が流石といわれるのは頭、心の教育をするからです。
これからの気象は良くなる方向はない、悪くなる、更に原発を続けてゆく事については改めないといけない。
年3000億円利益、いまだに21兆円かかる、70年掛かるわけです。
もし事故が又有った時に誰が責任を持つのか?
現実に見ると悲観的だが、政策を良くすれば楽観的に見られる。
人間の頭の投資して、インターネット、AIを自分達が利用して日本が特別な国として生きてゆく、世界の尊敬を集める、そういう方向に舵を切ってゆく、そうすることで日本が世界から尊敬される道が開かれる。