2017年3月1日水曜日

林 完次(天体写真家・天文作家)   ・“星の声”を届ける

林 完次(天体写真家・天文作家)  ・“星の声”を届ける
1945年東京生まれ、子供のころある事がきっかけで星の虜になり、今では星と風景が一体となった詩情豊かな写真と文章で独自の世界を作り、多くの人を魅了し続けています。
東京品川のプラネタリウムの講師を務めたり、各地で講演を行うなどして星の魅力を伝えています。
今でこそご自分の世界を築かれた林さんですが、今に至るまでには様々な人生の選択や、時には失敗がありました。

カメラは数十台あります。
いろんな範囲の写真を撮るので、魚眼レンズから超望遠レンズ迄たくさん使います。
天体望遠鏡にカメラを取り付けて撮影する時もままあります。
八ヶ岳の山麓が大好きで夢中になって出かけていて、南麓によく出かけました。
とにかく星が大きく感じました。
3等星が1等星に感じ、天の川がワーッと滝のように流れていました。(1970年代)
今は明るくなってきて、どんどん星が消えてきました。
カシオペア座が唐松林の上にあり、良い写真になるなあと思って撮って、もう一度撮りたいと思って20~30年経って行ってみると、もう唐松林が無くなっていてホテルが出来てしまっていた。

凛とした空気が流れていて、季節の匂いも感じます。
そこに身を置くと星のまたたきが話し声のように聞こえてきます。
ギリシャ神話が伝わっているので劇場のような感じがして、せりふが聞こえてくるような感じがします。
冬の空が大好きです。
夕方でも西の方に夏の大三角が見えて、こと座のベガ(織姫)、わし座のアルタイル(ひこ星)、はくちょう座のデネブ、それぞれの1等星が見える。
白鳥がくちばしの方向から沈もうとしている。
十字形をしていて相合傘の恰好で織姫と彦星が両側にいると言う状態で沈んでゆく。
冬は一晩中かかって四季の星座を見ることが可能です。
3月の夜8時頃にはオリオン座、おおいぬ座、ふたご座の一等星でつくる冬の大三角が真南に見えていて、その後から、かに座、しし座、うみへび座 春の星座が昇ってくるので春を感じる事が出来る。
昔は朝迄撮影していました、夜明け、朝がいいんです。

子供のころキャラメルを買ったときに、望遠鏡が貰えると書いてあって、たくさん買って望遠鏡を貰ったことがある。
苦労して望遠鏡を月の方角にセットして見たら満月を見ることができ感動したが、再度見ようと思ったら見ることができず、誰かが動かしたと大騒ぎした。
後に天文の本を読んで、月が動くことが判ってさらに天文に興味を持ちました。
火星も見たいと思うようになり、小遣いをためていたら、父に望遠鏡を買ってもらって火星を見たり、月、木星、土星等を見ることができました。
天文図鑑を見て、宇宙の想像図などもいろいろあり、特にギリシャの物に興味を持った。
学校が西にあり、夕暮れ時の風景が綺麗で写真に撮りたいと思うようになり、写真に撮ったがほとんど真っ黒で、露出不足だといわれて、条件を変えて記録しながら撮影をしたら、上手く撮れたものもあった。

高校時代は射撃部があり射撃をやっていました。
東京オリンピックの候補選手になってしまって、強化合宿などにも参加しましたが、最終的には選ばれませんでした。
大学では法学部に入って、保険会社に入りましたが、その後天文雑誌をやっている出版会社に行きました。
家は化粧品の瓶の製造販売をする会社をやっていましたが、プラスチックがはやってきて、段々売れなくなってきて、経営がうまくいかなくなってきて、不渡りを受けて、下請けにまで支払いをして、全部家屋敷を売り払って対応したので、星の事はやっていられないと思って、法学部に入ったが星の本ばっかり見ていました。

編集部員の募集があり、迷わず応募しました。(25歳)
読者に喜んでもらう原稿を希望すると、ときどきミスッて書いてくることもあり、私が手直しをするということを繰り返すうちに、自分で書いてみたらというようなことも云われて、そのうちに執筆の依頼もあり自分でも書く方に進もうと思ってフリーになりました。
同じ星座などもギリシャ語、アラビア語、ラテン語、中国語、日本語など星の名前に興味を持って、そういうのを調べる様になりました。
こと座のベガ、両脇に星を従えていて、裏返しのくの字型をしていて、急降下する鷲のような翼をたたんだような格好になり、意味は急降下する鷲、アルタイル(ひこ星)、飛ぶ鷲、両脇に星が一直線に並んでいて、翼を広げているような格好に見える。
同じ星でも土地土地によっていろんな呼び方があり、興味をもって掘り下げて行くと文学の本を読むようになりました。

星の名前は土のにおいがする、農耕を営んでいた人達は星を目当てに勤勉に働いてきた。
「三ツ星まっぴる粉八合」 オリオン座の三ツ星、まっぴる=真南にやってくること、9月の半ば過ぎに当たる、その時期にそばの種を蒔き、その実を粉にひくと一升のそばから八合のそば粉がとれる(普通は6合ぐらいのようだが、実りがいい)
10年余りは夢中で判りやすい天体観測の入門書を書いていたが、望遠鏡にカメラを取り付けて星座の間に潜んでいる星雲などを撮影することに、段々疑問を感じるようになってきた。
大型、高性能に対して個人で出来ることには限界があり、疑問にぶつかってしまった。
1985、6年ハレー彗星が接近、重い機材を持って八ヶ岳に行ったが、ピラー(支柱)を取り付け、星を追求する装置、望遠鏡を取り付けようとするが最後のボルトが見つからなくて、撮影ができなくて、初歩的な三脚機材で撮影をした。(子供のころの撮影方法と同じ)
ハレー彗星は小さく尾がとれていたが、臨場感のある写真が撮れて、これだと思いました。
その失敗があって、その良さに気が付きました。

それ以来旅をすることが多くなりました。
里山で見た星空とか、親しみやすい星空を親しんでいただけるようなことが一つの目標になりました。
都会でも1等星、2等星が見えます。
プラネタリウムの楽しみ方はいろいろです。
講演会は中高年の方が熱心です。
「宙(そら)の名前」という本(吃驚するほど反響があった本)、の第二弾を書いてみたいと思っています。