2017年6月22日木曜日

小林大祐(加賀の井酒造第18代蔵元)・糸魚川大規模火災から半年(2)

小林大祐(加賀の井酒造第18代蔵元)・糸魚川大規模火災から半年(2)酒蔵復興にかける
江戸時代創業で360年以上の歴史がある加賀の井酒造も一つの蔵を残して消失してしまいました。
蔵元の小林大祐さんは会社勤めをしていた弟久洋さんに酒蔵に戻って来るように永年説得を続けて兄弟二人で新たなスタートを切ろうとした矢先に火災が起きました。
火災の直後、酒蔵の再建を目指す事を表明した大祐さん、富山県の酒蔵の設備を借りて酒作りを行い、先月糸魚川市内の酒店などで販売を再開しました。
弟の久洋さんは酒作りを学ぼうと3か月間岩手県の酒蔵で修行をしました。
火災から半年が経った今、酒蔵の建設の計画が進み、この冬には元の場所で酒作りの再開することを目指しています。
大規模火災を乗り越え加賀の井酒造の復興にかける思いを伺いました。

火事があってみんな焼けてしまったんだなあと云うような感じです。
酒屋の機能を失ってしまって寂しい気持ちはありますが、街も大分無くなり街の一員としても寂しいと感じます。
前田家の参勤交代の本陣でもあった歴史のある街でした。
これから建物は新しくなりますが、建物で伝えられない部分を私たちがしっかり伝えて行くことによって歴史が伝わって行くと思うので、しっかり伝えていかないといけないと思っています。
火事の当日は、すこし煙が見えて火事かなあと思っていましたが、前のブロックに火が点いたら声を掛けてほしいと言って酒造りの方に戻りました。(忙しい時期だった)
前のブロックに火が点いたと云うことで信じられなかったが、確認したら火が点いていて避難の準備をしました。

火事の方向には高い建物があり火事の様子があまり見えなかった。
TV放送では大規模火災の報道があり、自分たちがいる場所からは炎が見える訳ではないので、不思議な感覚、身近で起きて居ることが体感できないままでした。
焼けた臭いがすごかったのは記憶にあります。
目の当たりに見て大変な事になってしまったと思いました。
弟と一緒にやっていこうとしているところに火事が起きてしまいましたが、ここで辞めるという選択肢は無かったです。
多くのお客様から応援していただいていたので、前を向いて進めていきたいという気持ちが一番強かったです。
火事が起きてしまい、今はもう一度酒蔵を建てて酒屋に戻ると云うのが今の目標です。
会社として回せていけるのかということに関しては非常に不安を感じています。
(1年市場から姿を消しているので)

今回全てのものを失っているので、同時に進めなければならないことが余りにも多いので、復興への取り組みを一緒にやってくださる方に、どうやったら進められるのか、くじけそうな気持ちに対して、意識を変えて向き合う様にしています。
兄が頑張って来て、戻ってきてほしいとの話があり、よほど大変なんだなと思って二人で力を合わせれば、もっといろいろなことが出来るのではないかと戻ってきました。
弟は家族もあって、12月は色んな意味で節目の年だったと思います。
こういうことになってしまったが、一緒にと言ってくれたので、私は頑張らなければいけないと思いましたし、有難いと思っています。
酒米の生産者さんにとっては売り先が無くなってしまうと云うことになってしまって、他の蔵元さんとの協力などで酒米をうまく処理でき感謝しています。

弟:1月20日ぐらいの岩手県の酒蔵(廣田酒造)に勉強のためお邪魔することができました。
廣田酒造さんも東日本大震災で被害を受けて、周りからの支援があり、困っている方がいたら支援したいと云う気持があったそうです。
ゼロの状態から復活された方々のお話を直接聞くことが出来たのは、貴重な体験だったと思います。
いろんな人から声を掛けていただいて、有難いと思いました。(一人じゃないんだなと感じました。)
何でお返しが出来るのかなと思ったときに、今の現実を前に進めてしっかりやってますよと見せることがそういった方々に対しての恩返しと言うか、結果をみせることで多くの方へのお答えになるのかなあと感じています。

繋がってこなかったお客様からも応援します、との温かい言葉を頂き、印象的に残っています。
この経験を踏まえて、大変な人達とか、災害とかが起きた時に、手を差し伸べる存在にならなければいけないなあと思いました。
酒は冬場しかできないので、今年の冬には必ず糸魚川でお酒を作って、色んな方々にお届けしたいと云うのが当面の大きな目標です。
当初描いてきたスピード感でここまでやってこれたと思うので、しっかりやりきれるところまで進めて、図面にあるものを現実に持っていきたいなあと思います。
にぎわいの一つにと、期待していただけること対して、行政の方針にお応えできるような形に織りこんできたつもりです、ガラス越しに酒作りの作業の風景を見ていただけるようにレイアウトした酒蔵にしました。
何がゴールか判らないような大きな取り組みだと感じていましが、街の期待、多くの人たちの期待とかありますが、先ずはおいしいお酒を届けたい、糸魚川がよりいい街になって行くために私達に何が出来るのか、取り組んでいくことが大事だと思っています。