2017年6月12日月曜日

鯉川なつえ(順天堂大学先任准教授)  ・炎天下のマラソンから得たもの

鯉川なつえ(順天堂大学スポーツ健康科学部先任准教授)・炎天下のマラソンから得たもの
高校生のころから長距離種目で活躍されて、現在は女性スポーツの研究をされている順天堂大学スポーツ健康科学部先任准教授、順天堂大学陸上部女子監督の鯉川さんに伺います。

今の高校生は速くなっているなと思います。
3000mを女子は走りますが、9分10秒を切って走る選手がたくさんいますし、5000mも一般の種目になりますが、15分台で走る選手がたくさんいます。
シニアになった時に強くなっているかと考えるとちょっと問題があるかもしれません。
1989年、第一回高校女子駅伝、私は筑紫女学園高等学校の2年生で出場、アンカー5区で初代区間賞でした。
中学まではバレーの選手でした。(全国大会出場)
身長が157cmしかなくて、今後続けていくには通用しないかなと思いました。
長距離もはやかったので、長距離をやってみようかなと思いました。

1984年のオリンピックから女子の正式マラソンになって行く。
オリンピックが自分の夢、目標だと思ってやっていました。
区間賞は取ってもチームとしては優勝できなかった、(第二位)
技術的なもの、メンタル的なもので自分は劣っていると思っていたので、そういうものを教えてくれる所に行こうと思って大学に進学しました。
科学的な事、血液など医学的な事をもってしてどう自分にプラスになるだろうと興味はありました。
男子の大学でしたが、女子一期生でしたが、入学に対しては周りからは大反対でした。
色々な事を学んで、食べるもの、練習のリカバリーを考えたりしたら、より競技が楽しくなりました。

大学卒業後、実業団に入り、95年の福岡ユニバーシアードの代表に成り、マラソンを走るが、30km過ぎた頃、フラフラになりました。
9月3日で残暑、湿度が高かったがとっても調子がよかったので良いタイムで優勝したら、オリンピックの代表にもなれるといわれていたが、当日のウオーミングアップが駄目でした。(後からの感想)
15km付近でスコールのような雨が降って、そのあと又照りだして湿度が98%まで上がって、30kmの給水を取ったところまでは覚えて居ましたが、そのあとは意識がないです。
脱水症状と言うより、熱中症は意識障害、脱水症、痙攣などを含めた総称なのでそれが一気に出たものだと思います。(当時は熱中症と言う言葉はなかった)
救急で搬送されたところにアメリカのドクターがいて、日本の医師が指示した酸素吸入ではなくて、全てウエアーを脱がせて氷漬けにするようにして、その後アイスマッサージをして、20分後に意識が戻って、救急病院に搬送されましたが、その時にアメリカのドクターがいなかったら死んでいたかも知れません。
点滴を受けて次の日には戻りました。

湿度の高いレースの時には、スポンジを絞って乾かして身体を拭きなさいと言う指導をしています。
コーチに成ってからはそのことが色々役立っていると思います。
26歳のときに競技は辞めました。(会社の倒産とともに陸上部も廃部になる)
1年間助手をして、自分との違いにどうしたらいいかわからなかった。
翌年大学院に入りました。
生徒と話し合いをしながら、調べて行く作業で、一つだけ駄目でも結果は出ないものだと改めて感じました。
もう少し、女性アスリートたちがもっと長く競技を継続できないものかということが一番の思いです。
怪我、結婚して出産して続ける選択肢がなかった。
女性アスリートたちが長く競技を続けられるような指導者になりたいと思いました。

①身体生理的課題、小学校3~4年生で1年間に10cmぐらい伸びる、身長スパートと呼んでいるが、一緒に体重も増えないと骨密度、筋肉も増えていかないので、この時期に、きちんと栄養が取れて居るかどうか、適切な運動がとれているかどうか、月経がきちんと来てるかどうかによって、疲労骨折とか色んな障害が出てきてしまうので、身体生理的課題を理解したうえでやりましょうと云うことです。
②心理社会的課題、女性はメンタルが弱いといわれる人が多いが、その子たちに対してどうアプローチしてゆくのか、声のかけ方が違うと云うことを中心に研究して居ます。
③組織環境的課題、妊娠、出産を経ても競技が出来る環境を作ってほしい。
この3つがクリアできれば救われるアスリートは多いと思います。

もっとも影響が大きいのは中学校の先生だと思います。
先生に言われた厭な言葉トップテン。
ご飯食べるな、揚げ物食べるな、もっと痩せろ、毎日体重を計れとか厳しいことを言われる。
ご飯を食べるなと言われて育ってきているので、大学に入ってきた人たちの一番最初にやるのはご飯を食べさせるところからです。
痩せれば速くなるといわれて学んできているので、貧血、生理が止まったり起きるので、痩せただけでは早くなれない、しっかり食べてしっかり練習することによって身体は絞れる。
インポスターシンドローム(詐欺師症候群)、自分自身をいつわるという意味合いがあり、自分が成功したことは自分の努力のおかげではなくて、自分は強くて素晴らしいアスリートではないと思い込むことが女の子の特徴らしいです。
女性の方が詐欺師症候群に成りやすい。(自分を低く見積もってしまう)

男性の指導者は強くさせたいと思い、女の子は鵜呑みにしてしまうが、自己評価を高めてあげる様なコーチングをすることで女の子は変わってくると思います。
残念ですが、全く変わっていないと思います。
海外の選手は生理がないと走ってはいけないとかあるが、日本ではごまかしごまかし来て居るような気がします。
ほとんどの選手が月経が止まった経験があるので、当たり前だとおもわないでほしい。
無月経はエネルギー不足が全ての原因だとわかってきて、食べて体重を気にせずにいかにスポーツできるかということを大事にしながらコーチしています。

私が大学生の時に、国際千葉駅伝で、ロシアの選手に区間賞に1秒差で負けて、ロシアの選手はゴール後に子供に授乳していて、こういう女性に負けたのかと、その姿に対してショッキングでした。
海外では出産の直前までトレーニングをやって、出産後1カ月半位で元の生活に戻ることを自然にやっていて、日本では妊娠したら引退するという概念があるので、妊娠してもトレーニングが出来るので引退する必要はないんだと云うことを発信してあげたい。
女性の心をわかってくれる指導者が男子でも女子でも必要だと思いますが、女性のコーチをもっと増やすことが女性アスリートの活躍には直結してくることだと思います。
JOCの女性役員の数は10%と言われているが、世界では30%位に来て居て、2020年までに40%にしましょうと云うことです。
日本ではポジションがない、自信がない、数少ない女性コーチの苦労を見て、あんな苦労はしたくないと思うらしい。

子供がいる今は9時に寝て居ますが、子供がいなかった時は10時まで大学にいて仕事をして12時、1時に寝て6時には朝練習だったのでむしろ辛かった。
コーチライセンスを作ってもらいたいと思います。
知識のない人がコーチになると不幸を招いてしまうことがあるので、特に女性の場合は知識のない人が携わらないようにしてもらいたいと思います。
2020年に向けて女性アスリートの支援に莫大なお金が付いているが、2020年の先へも継続できるようなシステムを作ってほしいと思っています。
女性のスポーツ参加率、30代、40代の女性参加率が日本では少ない。
生活の中にアクティブがあれば、それはスポーツになると言う考え方を変えることで色んな障壁、ハードルが低くなると思います。