2017年8月29日火曜日

鶴丸礼子(服飾デザイナー)     ・身体の個性が輝く服を

鶴丸礼子(服飾デザイナー)     ・身体の個性が輝く服を
60歳、幼いころから服を作ることが大好きだった鶴丸さんは、服飾の専門学校を卒業し、
フランスブランドのオートクチュールで働いた後、服飾デザイナーになりました。
やがて障害や身体の痛みで既製服を着る事が難しい人たちがいることを知り、試行錯誤の後、10年掛けてどんな体形にもあう独自の製図法を生み出しました。
ことしの3月には一人一人の希望をかなえ、身体の個性を輝かせる服を紹介した写真集を出版しました。

写真集から3点
①バタフライジャケット、高齢の女性が椅子に坐っている。(足の具合がちょっと悪い方)娘、孫が両脇にいる。
濃い青の生地に鶴が描かれているデザインを3人が着ている。(絵に描かれていたもの)
布を自分でオリジナルで作ることをやって来ました。
車椅子に坐ったままで手の全く動かない人でも、他の人が簡単に着せることができる。

②黒いマオカラージャケット、普段は電動車椅子で生活する人、1歳8カ月でポリオ(急性灰白髄炎)に感染して、歩けなくなり就寝以外は身体の周りにコルセットを巻いている。
背中がつっぱたり、右手が細くて握力がない、依頼がありました。
左手だけしか動かないので、内ポケットも左手が使えるようにしました。
第一声が首が楽、とおしゃっていました。
生地はなめらか、カシミヤ・ドスキンという生地で皺にはならず家でも洗えます。
一年中着ることが出来ます。

③目の見えない女性が、点字服を着ている。
袖のところと肩の処にきらきら光るラインストーンが付いている。
この人は右目が義眼で、左目が僅かに見える。
障害の重い方をベースに考えて作るので、この洋服も全く見えないという事を想定して作っています。
ラインストーン(コバルトブルーを使っている)、点字の形にして服に付けるアイディアは私が出しました。
彼女はメイクに目覚めて、自分と同じように見えない人のためにお化粧するやり方を教えられる人になりたいということで、彼女はコスメの勉強をしています。

障害を洋服で解消したり、治したりすることはできないが、今ある自分を人と違うおしゃれが出来ることで、ジロジロ見られることが厭だったことが、注目されることが快感なってどんどん変わってきて、前向きになって来ます。
どうせ生きていくのなら楽しく生きていかなければいけないと思います。
洋服は着たら脱ぐことができるので、今日も明日もずーっと変えることができる。
ジャージで過ごすよりは、人と違ったおしゃれが出来る訳です。
ファッション性だけではなくて、20分かかって着ていたのが4分でできるとか、そうすると自信にも繋がっていきます。

小学校の時に列車事故で片足になった1つ先輩の女性がいました。
大人になって最初に出会った障害のある方は私が藍染の個展をしたときに洋服を買って下さった人で、自分の体形に合わせて作ってくださいと言われました。
日本にバリアフリーと云う概念が入ってきて、そういう方たちと会って行く中で、こういう人たちのためになんで服を作ってこなかったのだろうと、猛反省しました。
色んな障害者が集まる施設等に行ったときに、なんとかしなければいけないと思いました。
最低、バストと背丈で計算方式があり、コンピューターで平均値を出すわけで、複雑な計算があるが、私は身体にメジャーを当てて前後左右をきちっと測って、腕を伸ばした時、曲げた時なども違うし、ゆがみもあり、一回でピッタリいく製図法を模索していて、そうしているうちにどんどん測るところが増えて来ました。
解決するための共通項が出来たりして、46か所を測ってそのうちの26か所を使って一回で正確な原形を作ることを確立しましたが、自分でもびっくりしました。
一般的には原形には補正が必要だが。

鶴丸式製図法が生まれました。(20年前)
測るところと測るところに1cm弱のシールを貼って、その中心間を測ります。
他の人と共有して作ることができます。
鶴丸式の採寸士というライセンスを持っていただいて、測ったデータが来て、会ったことのない方の洋服が作れるようになったらいいなあと思って、そういう学校も作っていきたい。
一つずつ出来ることからやって実現に向けてやっています。
スーツで10万円ぐらいで、保健が適用されれば安くできると思っています。
繊維筋痛症の方がいましたが、身体が触っても痙攣が来るぐらい痛い難病、痛みは治らないが最後はおしゃれしかないということで来ましたと言っていました。

測定が非常に難しいと立体裁断という手法を使うが、カーブしていたりしていて、難易度が高くて、直接布を体に当てていって、ピンを打って型紙を作って行く立体裁断をやらないと無理です。(身体のゆがみにも対応できる)
オートクチュール、フランスのオートクチュールの組合に入っていないといけない。
最高級の製縫技術で、全て手作業で行います。
ハ差し(昔ながらの仕立て)、片仮名のハの字のように掬いながら布にカーブを付けて行く。
このやり方が厚生労働省の1級技能士の検定試験の実技の課題なので、弟子たちには必ず教えてハ差しと云うやり方でやっていきます。
弟子たちには世界にどんどん出て行ってほしい。
弟子は30人ぐらいいますが、2年ぐらいしたらだいたいみなさんプロになります。
難しい仕事、めんどくさい仕事ほど学ぶ事が多いので、お客様に感謝する気持ちでなるべく授業料を払う気持ちで少し安くしています。

私は幼稚園の時から人形の洋服をつくっていました。
中学の時に初めて自分のワンピースを作って、高校でも作っていて、短大ではほとんど洋服を作っていました。
短大は初等教育の学校の先生になるための短大でしたが、被服科の教室を無断で使っていました。
あなたは面白い物を作るから、卒業したらうちの学院にいらっしゃいと言われました。
文化服装学院の夜間に行きながら仕事に行っていました。
20歳から睡眠が3時間と云う生活になりました。
自分の服を1年間に365枚作ったことがあります。(翌日着る服を作った)
体調を崩して、仕事を辞めて、翌日はパリに行きその後世界の色々なところに旅行しました。
その後自分のブランドの立ち上げてやろうと思いました。
アメリカから日本を見たときにいいなと思いました。(藍染、シルクスキン・・・)
どんな人にも着る喜びを味わっていただきたいと思います。
技術者をどんどん育成していきたいと思っていて、洋服のリフォームに関して自分の経験してきたことを情報提供して、やり方が綺麗に上手になっていただきたいと思っています。
大分は自分の人生の半分居るので、障害者たちのファッションは大分が頑張っているな、というようになりたいと思っている。
これはどんな人の身体にもぴったりするので、鶴丸式製図法を世界標準にしたいと思っています。
障害を持たれた方、高齢の方、洋服を身体に合せて作って行くと、ゆがんでいる者がゆがんでいないように見えるので、後ろ姿を見てもらいたい、後ろ姿に自信を持っていただく、そうすると気分も変わってきて人にも優しくなれると思います。